| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-384 (Poster presentation)

知床国立公園における道路に沿った外来および在来の植物群集の分布パターンと競合

*冲邑時代(横浜国大・環境情報), 小出大(国環研・地球環境), 森章(横浜国大・環境情報)

市街地や道路は外来植物の侵入源や分布拡大のコリドーとなることが知られている。例えば、世界自然遺産に登録されている知床国立公園でも路傍を中心に外来種が侵入している。外来種の侵入にかかわる散布能力や競争能力は植物の機能形質と強く結びついていることが研究されている。そのため本研究では、外来種の分布とそのメカニズムを明らかにするために、外来種と在来種の群集構成や機能形質を侵入源となる町からの距離や調査地の非生物的環境を含めて検討し、外来種の分布パターンを明らかにした。

調査は北海道の知床国立公園内の道路約31㎞に沿って路傍の植生調査と環境要因の測定を行い、各種についてSLAや種子重量などについての機能特性の情報を収集し、外来種と在来種の機能特性の違いや、種や機能特性の環境要因、空間要因との関係を解析した。解析の結果、地理的な距離の増加によって群集の類似度が低下する度合いは外来種の方が低く、外来種の方が分布拡大能力が高いことが示唆された。外来種は町に近いほど種数が多く、在来種では逆の結果になったことから、町が侵入源となっており、人間の撹乱が外来種侵入を促進することが裏付けられた。機能特性を比較すると、外来種は在来種に比べてクロロフィル値は低く、花期の長さは長く、種子重量は小さい傾向にあり、これらが高い分布拡大能力につながると考えられる。また外来種では各群集内の機能的多様性は町からの距離が離れるに従って低下したことから、町から遠い場所では環境制限が群集構成を決定していると示唆された。今後は分布拡大能力に関わる機能形質や特に優占度の高い種に着目し、外来種の侵入メカニズムの詳細が明らかになることが期待される。


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