| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-387 (Poster presentation)

ウシガエル幼生による密度依存的な水域生態系への影響

*澤田彩香(神戸大・理),佐藤拓哉(神戸大・理)

侵略的外来種であるウシガエルは、在来生物に対する捕食や餌資源をめぐる競争により、生物多様性を減少させる。また、ウシガエル幼生は幼生越冬により長期間水域に生息し、非常に高密度になる。ウシガエルが侵入した水域では在来カエル種が変態した冬期も摂餌や排泄を介した物質循環が効率よく行われ、他の生物にも影響を与えると考えられるが、実際のウシガエル幼生の役割は明らかになっていない。本研究では、野外に設置した大型プールに生息するウシガエル幼生を除去することによって、それらが密度依存的(0・10・25・75・200匹/プール)に秋から初冬の生物群集や生態系機能に与える影響を量的・質的に評価した。実験開始から2か月間後(2015年11月)、池の生食連鎖に関わる光合成有効放射(PAR)の水深に沿った減衰率はウシガエル幼生の密度に依存して高くなっていた。一方、総一次生産(GPP)には密度に依存した明瞭な差は認められなかった。また、池の腐食連鎖系に関わる微生物活性と落葉の分解率には密度の影響は認められなかった。高次の捕食者のうち、メダカやトンボ類幼虫の生息個体数にはウシガエル幼生の密度との関係は認められなかったが、ゲンゴロウ類については、密度と負の相関が認められた。さらに、ウシガエル幼生の密度が0、25、および200個体のプールで採集した生物の安定同位体分析を行ったところ、メダカとトンボ類幼虫では密度の高い池ほど栄養段階が高い傾向が認められた。これらの結果に基づいて、本来日本産カエル類の幼生がほとんど生息しない秋から冬にかけて、ウシガエル幼生が密度依存的に池の食物網や生態系機能に及ぼす影響について議論する。


日本生態学会