| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-388 (Poster presentation)

葉緑体DNAを用いた雑種タンポポの起源地と分布拡大過程の推定

*特努恩,横山亮介,三好浩平,名波哲,伊東明(大阪市大・院・理)

近年、形態的に外来種に見える日本のタンポポの大部分が、在来タンポポとセイヨウタンポポとの雑種であることがわかってきた。しかし、その形成過程は全くわかっていないため、雑種タンポポの起源地と分布拡大過程を明らかにすることを本研究の目的とした。雑種タンポポの葉緑体は、母親の在来タンポポに由来するため、在来種と雑種の葉緑体DNAを比較すれば、起源地が推定できると考えた。まず、在来二倍体タンポポ201個体の葉緑体7領域(3,489 bp)の塩基配列を決定し、分布域全体のハプロタイプネットワークを作成した。その結果、ハプロタイプの関係は複雑であるが、地域間には有意な遺伝的分化があり、ハプロタイプに地域的偏りがあることがわかった。次に、雑種230個体の葉緑体1領域(275 bp)の塩基配列を決定し、ハプロタイプの地理的分布を在来種と比較した。その結果、三倍体雑種からは、在来種の持つ多様なハプロタイプが見つかり、在来種と三倍体雑種のハプロタイプの地理的分布は似ていた。このことから、三倍体雑種は、日本各地で形成され、起源地域からそれほど遠くない場所に分布していると推定される。一方、四倍体雑種のほとんどの個体がハプロタイプJで、この雑種は日本中に広く分布していた。しかし、ハプロタイプJを持つ在来種は見つかっていないことから、四倍体雑種は、日本あるいは海外のどこか限られた地域で形成され、すでに日本中に分布を拡大していると推測される。


日本生態学会