| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-390 (Poster presentation)

環境DNAを用いた広域モニタリングによるチャネルキャットフィッシュの早期検出

*本郷真理(龍谷大・院・理工), 山中裕樹(龍谷大・理工), 加納光樹, 苅部甚一(茨城大・水圏セ)

北米原産のチャネルキャットフィッシュは、霞ヶ浦(西浦、北浦、外浪逆浦)では1981年に導入され、2000年以降は優占種となった。2001年には琵琶湖でも侵入が確認され、現在では定着・再生産の恐れが高まり、水産有用種や稀少種への影響が懸念されている。本研究では水棲生物由来のDNA断片(環境DNA)をマーカーとして特定種の在不在を試料水の分析により判定する環境DNA分析を本種の検出に応用するべく、PCRでの検出に用いるプライマー・プローブの開発を行った。また、北浦と琵琶湖水系での侵入前線と季節的な生息場所の特定を試みた。

対象種と近縁種の筋組織片から抽出したDNA試料を用いて、対象種の種特異的な検出を確認した。北浦では2015年3月と8月に5地点で、琵琶湖水系では2014年11月と2015年3月、6月、9月に22地点で採水調査を行い、PCRによる対象種の在不在の判定を実施した。

北浦では、湖内だけでなく、対象種が好まないとされる小規模河川の河口から1km上流の地点でも検出された。琵琶湖水系では、対象種の捕獲情報がある瀬田川の4地点と、これまで捕獲情報がない瀬田川と琵琶湖の境に位置する地点でも検出された。これらの結果から琵琶湖全体への拡散が危惧されるだけでなく、瀬田川の支流への侵入の可能性が明らかとなった。本研究により野外試料水から対象種の環境DNAの検出が可能となり、対象種の広域的かつ長期的なモニタリングの実施体制が整ったといえる。今後は採水地点の間隔を狭くし空間解像度を高め、詳細な分布とその時間変化の解析から、分布拡大の方向やルートの監視が可能になると考えられる。


日本生態学会