| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-394 (Poster presentation)

外来生物の侵入要因:国際的な淡水生物の導入及び定着について

*伊藤雅浩(海洋大・海洋科), 箱山 洋(海洋大・水研セ)

自然分布しない地域への生物の侵入は、人為的な導入によって19世紀頃から世界各地で頻繁に起こるようになり、種によっては新しい自然環境に定着して在来の生物に大きな影響を与えてきた。導入された種が必ずしも繁殖して定着できるわけではなく、定着の成功には様々な要因が影響していると考えられる。導入種の定着プロセスの理解は、外来生物の侵入防止対策などの施策立案に寄与するだろう。ここでは、導入種の定着成功に関する仮説を、魚類等の淡水生物の導入・定着の記録および関連情報から検証する:仮説として、(1) 出身地・導入先の群集多様性、(2) 導入種のサイズ・繁殖開始齢等の生活史戦略が、導入種の定着しやすさに影響する。(3) 導入の回数・量(導入圧)が多いほど、(4) 出身地・導入先の距離が近いほど、(5) 気候が近いほど、(6) 侵入防止の規制が強化されていない昔ほど、導入種は定着しやすい。また、属などの分類群によって定着率が違うかもしれない。仮説検証の為に、FAO等の複数の文献の情報を統合し、国間の淡水生物の導入・定着の記録、導入種や群集の特徴、貿易量などをデータベースにした。分析には、導入した生物の定着の成功・失敗を目的変数とする多重ロジステッィク回帰を用いた。仮説に対応する要因は固定効果、属の影響は変量効果としてモデル化した。分析の結果、(1)出身地の群集の種数が多いほど、(2)最大サイズが小さいほど、(4)距離が近いほど、(5)平均気温の差が小さいほど、(6)昔ほど、導入種は新しい生息地に有意に定着しやすかった。(3)導入圧の指標である活魚の貿易量、属に関しては有意な結果は検出されなかった。結論として、生活史戦略・群集の特徴・環境の類似度といった生物的な要因が導入種の定着成功に重要であることが示唆された。また、近年の規制が有効であるという仮説も支持された。


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