| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-026 (Poster presentation)

マレー半島丘陵フタバガキ林での長期森林動態と一斉開花

*新山馨 (森林総合研究所),佐藤保(森林総合研究所),八木橋勉(森林総合研究所東北支所),田中憲蔵(森林総合研究所),飯田滋生(森林総合研究所九州支所),木村勝彦(福島大学), Azizi Ripin(グリーン・フォレスト・リソーセズ),Abd. Rahman Kassim (マレーシア森林研究所)

熱帯雨林の長期動態を明かにするため、マレーシア半島の丘陵フタバガキ林に1993年に設定した6haの固定試験地で、毎木調査(2003年まで2年ごと、その後4年ごと)と、リター生産量(毎月)を2015年まで継続してきた。その結果、地上部現存量とNPP(純一次生産量)は、年降水量の変動に対し極めて安定していたが、樹木の死亡率と葉リター生産量は降水量の変動をすこし上回る変動幅を示した。一方、種子生産量は降水量の変動を更に7倍ほど上回る大きな変動を示した。一斉開花・結実は、1月から3月にかけての希な乾燥が7日以上続いた後に起こり、20°C以下の低温現象とは一致しないことが多かった。そのため、乾燥が一斉開花のトリガーであると結論した。22年間に4回(1998、2002,2005,2014)の一斉開花・結実があり、間隔は3年から9年、平均5.2年であった。種レベルでは、優占種であるShorea curtisiiScaphium macropodumなどの個体数、現存量は共に22年間で減少したが、Macaranga bancana は個体数が2倍、現存量が3倍に増えていた。気候変動下での熱帯天然林の価値は、現存量やNPPなどの安定的維持にあると考えるが、種レベルでは様々に異なった動態が生じていることも確実である。どの程度の降水量の変動まで、現存量やNPP、種構成が安定を保てるのか、長期観測を継続し確認していきたい。


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