| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-153 (Poster presentation)

中部地方の市街地に生育するシダ類の温暖化による種組成変化予測

*村上健太郎(名古屋産業大・環),森本幸裕(京都学園大・バイオ環)

研究目的:市街地におけるシダ類の種組成が気候変動とともに、どのように変化するかを予測し、実地でモニタリングを行うための基礎資料を得るための研究を行った。

調査地域:東海~中部地方の53箇所の鉄道駅周辺の路傍(石垣、壁、建物間の隙間等)

野外調査方法:2015年5~11月にかけて各駅周辺に成立するシダ類群落を各50~79箇所サンプリングし、出現種を記録して、シダ類群落に生育していた各種の出現頻度(=種の出現回数/調査シダ類群落数)を集計した。

気候データ:現在気候はメッシュ平年値2010、将来気候(2076年~2095年予測値)は地球温暖化予測情報第8巻を使用

分析方法:二元指標種分析(TWINSPAN:出現頻度と調査区で構成される種組成行列データによる)、分類木ほか

結果と考察:TWINSPANの第2段階までの区分を採用して群落を区分すると、オシダ、ホソバシケシダ等を指標種とするA、テリハヤブソテツ等を指標種とするB、ナガバヤブソテツ等を指標種とするC、イシカグマ等を指標種とするDに区分された。また、これらの違いに影響する因子を分類木によって分析したところ、年平均気温、冬季降水量、夏期降水量、年降水量の4気候要因で説明される有効なモデルが作成された。このモデルをもとに、シダ類群落の潜在分布地図を描き、将来気候予測値に基づいて、各タイプの将来予測分布図を描いた。その結果、検討した中部地方を中心とした118,808個の3次メッシュのうち、Aは減少する(46.9%→21.1%)一方で、Cが全体の26.9%から41.9%に増加(+15.0%)すると予測された。B及びDもそれぞれ増加すると予測されたが、各約5%の増加にとどまった。種としてはCに集中する種であるナガバヤブソテツ、タチシノブ、イヌケホシダ、カニクサ、ベニシダ、ホシダ等の分布拡大が予測された。


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