| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-164 (Poster presentation)

縄文時代以降の森林生態系と人の移ろいー琵琶湖地域における古生態学と考古学データの比較から

*林 竜馬(琵琶湖博), 佐々木尚子(京都府大・生命環境), 村上由美子(京都大・総合博), 瀬口眞司(滋賀県文化財保護協会)

森林植生の変遷過程を探り、時間的推移や地域的差異からその生態学的背景を論じるためには、森林生態系に影響を及ぼす要因の1つとしての「人・社会・文化」の変遷との対応関係を考えていくことが必要である。本発表では、滋賀県の遺跡における古生態学データベースの結果を中心に、縄文時代以降の森林生態系の変遷を明らかにし、考古学の研究成果との対比から人の移ろいとの対応関係を検討する。

滋賀県の遺跡における古生態学データベースの中の花粉分析結果に基づいて、過去10,000年間についての森林植生の変化を見ると、縄文時代早期にはコナラ亜属を中心とした落葉広葉樹林が優勢であったが、中期以降になるとアカガシ亜属を中心とした常緑広葉樹林へと植生が変化した。特に縄文時代後期では、常緑広葉樹林とともにスギも優勢となった。弥生時代以降にはイネ科とニヨウマツ亜属が増加をはじめるものの、それまで優勢であったアカガシ亜属やスギも依然高率で出現を続けた。しかし、中世以降には大きく花粉組成が変化し、イネ科とニヨウマツ亜属がさらに急増し、スギの顕著な減少が認められた。

滋賀県における遺跡分布と森林植生の変化について比較すると、沿岸部と山間部が複合する景観にほとんどの遺跡が形成されていた第一段階とされる時期は、落葉広葉樹林の優占期〜減少時期に相当していた。さらに、第一段階の遺跡立地に加えて沿岸部や扇状地でも遺跡が顕在化する第二段階は常緑広葉樹林の増加時期に、氾濫平野も含めた内陸部の遺跡数の比率が激増する第三段階は常緑広葉樹とスギの優勢期にそれぞれ相当していた。


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