| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-437 (Poster presentation)

窒素施肥により落葉広葉樹林の土壌呼吸および地下部炭素動態はどう変化するのか?

*片山歩美(九大),牧田直樹(森林総研),高木理恵(北大),李 眞(北大),安宅未央子(京大),中路達郎(北大),日浦勉(北大)

近年の森林への窒素沈着量の増加により、窒素負荷が森林の炭素循環に与える影響を評価することが必要とされている。これまで森林土壌での多くの研究で、窒素負荷により土壌呼吸速度が低下することが報告されているが、樹木の根系や微生物呼吸のどの様な応答を介して土壌呼吸速度が変化するのかといった理解には至っていない。したがって本研究は、窒素施肥が樹木根と微生物分解のプロセスを介して森林の土壌炭素動態に与える影響を明らかにすることを目的として行われた。

本研究は北海道大学苫小牧研究林にある広葉樹二次林で行われた。2013年4、8月に各50㎏N/ha、2014年4月および2015年4月に100㎏N/haの窒素(尿素)を9.3haの範囲に散布した。窒素散布エリアをN区とし、そこから約100m度離れた非散布エリアにC区を設置した。それぞれのプロットにおいて2013-2015年の間、DBH、リターフォール量、細根バイオマス(0-30㎝)、リターバッグ法による葉と根の分解速度、土壌呼吸速度の測定を行った。

樹木のDBHおよびリター分解速度、2013-2014年のリターフォール量は両区間で有意な差はなかった。細根バイオマスは、<0.5㎜の直径階においてのみ、有意にN区の方が高かった。土壌呼吸速度は根呼吸の活性が高くなる夏季においてN区の方が有意に高かった。ミズナラの直径階別の重量あたり細根呼吸速度は両区で変わらなかった(高木、2014)。これらの結果より、N区では細根バイオマスが大きく、その量的要因により根呼吸が高くなり、夏季においてのみ土壌呼吸が高くなったと考えられる。窒素施肥直後には、樹木の落葉量や微生物分解の応答ではなく、微細根バイオマスの応答により土壌呼吸が影響を受けることが明らかとなった。


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