| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-441 (Poster presentation)

メコン川流域ダム貯水池の水質とその変動

*広木幹也,冨岡典子,福島路生,村田智吉(国立環境研),Tuanthong Jutagate (Ubon Ratchathani Univ.),今井章雄,小松一弘(国立環境研)

メコン川流域では多くのダム建設が計画されている。これらのダム貯水池では本来の目的である灌漑や電源開発に加えて、新たな水産資源の提供をもたらすことも期待されている。我々はこれまでメコン川流域の代表的なダム貯水池を調査し、ダム貯水池の漁獲量と一次生産および水中の全リン濃度(TP)の間に正の相関関係が見られることなどを報告してきた。一方、水中の栄養塩濃度は同一貯水池でも季節的、空間的変動も大きく、これらを明らかにすることは貯水池の環境、資源を管理していくうえで重要であると考える。

【方法】メコン川中流域(ラオス、タイ)の8貯水池で2012~2014年にかけて、各貯水池3~8回の調査を行い、湖心(最深部)及び湖畔または流入河川(5地点)において水質を測定した。また、下流域(カンボジア)のトンレサップ湖においても7回の調査を行い、湖水及び直接流入する河川の水質を測定した。

【結果及び考察】調査した貯水池の湖心部のTPは0.002 - 0.08 ppmで、湖岸部の濃度は地点間差が大きく、湖心部と同程度か、これより高い場合が多く、また、流入河川や上流よりの湖岸部で高い傾向にあった。明瞭な季節変動が見られた貯水池では、5, 6月に高く、11月~2月に低下する傾向が見られ、このような貯水池では河川を通じて流入するリンの変動が貯水池のTPの変動に大きく影響していると考えられた。下流域のトンレサップ湖では逆に流入河川のTPは湖心部の濃度よりも低い傾向にあったが、湖心部のTPは5, 6月の減水期(0.1 - 0.18 ppm)は11~2月の増水期(0.02 ppm)の数倍の値を示し、水位変動がTPに大きく影響していると考えられた。


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