| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-442 (Poster presentation)

落葉樹41種のリターが土壌の炭素と窒素の無機化に及ぼす影響と植物の成長戦略の関係

*上田実希(東北大・生命),黒川紘子(森林総研),川邊瑞穂,中静透(東北大・生命)

植物が無機態の炭素や窒素を体外から吸収して同化し、やがてリターとして土壌へ供給する活動は、生態系の炭素および窒素動態の最も重要な稼働力の一つである。植物から土壌へ供給されるリターの形質は、植物の成長戦略を反映しており、植物種間で異なることが知られる。土壌へ供給されたリターの形質は、分解や無機化などの土壌プロセスに影響を及ぼす。本研究では、植物種間で異なるリターの形質が土壌中の炭素および窒素の無機化プロセスに及ぼす影響を調べた。茨城県に位置する小川研究林において、落葉樹41種の落葉リターを採取し、実験室において各リターを土壌に添加して100日に渡って培養し、炭素と窒素の無機化速度を測定した。その結果、炭素の無機化速度は植物種間で最大2倍、窒素の無機化速度は植物種間で最大9倍の違いが見られた。また、培養が進むにつれて、無機化に影響する要因が変化し、培養実験の序盤(14日まで)は防御物質の濃度や葉の厚みなどが炭素の無機化速度に影響したが、中盤ではこれらの影響は小さくなり、窒素濃度など別の形質が影響した。最終的にはいずれの形質も有意な影響が見られなくなった。このことは、土中で分解者の作用を受けたリターの性質が徐々に変化するのに伴って、土壌プロセスへの影響も変化していくことを示唆している。また、炭素と窒素の無機化の間には正の相関が見られ、植物種が炭素と窒素の無機化に及ぼす影響が連動していることが示唆された。さらに、植物リターの形質と、炭素および窒素の無機化プロセスとの関係から、植物の成長戦略が植物リターの生成を介して土壌プロセスに及ぼす影響について考察する。


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