| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-449 (Poster presentation)

自然レベル放射性炭素同位体を用いた北極永久凍土融解に伴う土壌炭素分解の実態解明

*近藤美由紀(国環研), 大塚俊之(岐阜大・流研セ), 米村正一郎(農環研), 吉川謙二(アラスカ大), 田邊潔, 内田昌男(国環研)

極域永久凍土中には、現代の大気中に存在する約2倍の炭素が蓄積されている。この巨大な炭素プールは、数千年以上凍結した土壌中に累積した植物由来有機炭素からなるが、温暖化を初めとする気候変動により永久凍土融解が進行することで、これら有機炭素の分解促進ならびに温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)とメタンの放出量の増加が懸念されている。本研究では、永久凍土融解に伴う温室効果ガスの放出ポテンシャルを評価するために、北米アラスカ州のツンドラ生態系、温暖化実験サイトを含む北方林において、冬期に土壌コア試料の採取を行い、室内での凍土培養実験を実施した。培養実験の結果、北方林およびツンドラで採取したどちらの試料でも0℃前後でCO2の放出が確認された。北極海沿岸のツンドラ生態系の永久凍土層では、-3℃から0℃の低温域において、北方林よりも高いCO2の放出が認められた。0℃から10℃の範囲においては、北方林の活動層と近いCO2放出量であった。加速器質量分析計を用いた放射性炭素(14C)測定から、この永久凍土中の有機炭素の生成年代は2830±30 yrs BPと推定された。また、14Cの鉛直プロファイルと、14Cモデル(Trumbore & Harden 1997)を用いて土壌有機炭素の分解率を求めると、沿岸のツンドラ生態系では0.0002 ± 0.0001 yr-1であった。本会議では、異なる生態系から採取された永久凍土について土壌培養実験から永久凍土中有機炭素の分解活性の定量化並びに、生態系毎の温暖化影響について検討した結果を報告する。


日本生態学会