| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-460 (Poster presentation)

亜熱帯マングローブ林における粗大有機物 (CWD) の分解呼吸特性

*友常満利 (神戸大・院・農),大塚俊之 (岐阜大・流圏セ),新海恒,墨野倉伸彦 (早稲田大・院・先進理工),小泉博 (早稲田大・教育)

森林生態系の従属栄養生物呼吸 (HR) の動態には、倒木といった粗大有機物 (CWD) の分解が大きく寄与する場合がある。高い生態系純生産 (NEP) を示すマングローブ林においては、潮位変動の影響で、陸域とは異なるCWD分解特性を示すと予想されるが、それらを報告した例はない。そこで本研究では、亜熱帯マングローブ林においてCWDからの炭素放出の動態と環境要因との関係を明らかにし、HRやNEPへの寄与を評価した。

調査は沖縄県石垣島の吹通川流域に広がるオヒルギ林を対象とした。CWD呼吸速度 (RCWD) の測定においては、CWDの①サイズ、②腐朽度、③存在する地面からの高さをそれぞれ3段階 (n = 3) に分け、密閉法を用いて年3回測定した。同時に気温とCWD含水率を測定し、RCWDの環境応答性を評価した。また、林内の方形区 (80 m×40 m) に存在するCWDの①~③を記録し、各倒木量を推定した。これらの結果から年間CWD呼吸量を算出した。

RCWDの平均値は18 mgCO2 kg-1 h-1で、季節やCWDの質によって異なる値を示した。RCWDと気温には有意な強い正の相関が認められ、夏に高い値を示した。一方、浸水してCWDの含水率が上昇しても、RCWDはほとんど変化せず、この応答は陸域生態系とは異なる傾向であった。CWDの質においては、サイズや腐朽度が中程度で地面から低い位置にあるもので、比較的高いRCWDが認められた。推定された倒木量は6.7 MgC ha-1で、年間CWD呼吸量は0.5 MgC ha-1 yr-1と算出された。これは従来法で算出された同生態系におけるHRの16%に相当し、マングローブ林におけるHRやNEPが過小評価されている可能性が示された。


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