| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-466 (Poster presentation)

泥炭湿地で生業を営む村民のミネラル摂取-パプアニューギニア東セピック州クラインビット村の事例から-

*梅村光俊, 竹中千里(名大院・生命農), 村山伸子(新潟県大・人間生活), 夏原和美(日赤秋田看護大), 池口明子(横国大・教育人間), 小野映介(新潟大・教育), 小山智之(海洋大院・海洋科学技術), 宮川修一(岐大・応生), 野中健一(立教大・文)

クラインビット村は、パプアニューギニア、東セピック州セピック川支流に位置するブラックウォーター地域の泥炭地質の上に成立している。村ではサゴヤシから採れるサゴ澱粉が主食とされ、野菜の栽培やサゴムシの幼虫など昆虫の採集、漁撈等が営まれている。泥炭土壌は一般に、弱酸性から強酸性を示し、他の土壌に比べてカルシウム、鉄、銅などのミネラルが不足している。このような貧栄養の土地において、栄養摂取源を野生生物に依存する村民の環境への適応を栄養学的側面から理解するために、本研究では、食材に含まれる栄養元素, 特に微量元素含有量の特徴を明らかにすることを目的とした。

2011年8月に、現地で食されているサゴ澱粉、昆虫、魚類、野菜・果物、市場で購入される加工食品を採取し、日本へ持ち帰った。食材は、凍結乾燥させ含水率を算出した後に粉砕し、硝酸-過酸化水素により湿式分解した。食材中の多量必須元素、微量元素濃度をICP-MSまたはICP-AESにより測定し、生重100 gあたりの元素含有量を算出した。

結果として、魚類はカルシウムや鉄、亜鉛を、サゴムシの幼虫などの昆虫類は多くのミネラルを比較的高濃度で含有し、特にバッタでは銅、セレン、モリブデンの含有量が高かった。また野菜類にはカリウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素などが豊富に含まれており、村民は、これらの食材を通して、様々な必須ミネラルを獲得していると考えられた。


日本生態学会