| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T18-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

都市生活と生態系サービス

*佐藤真行(神戸大・発達科学),青島一平(神戸大・発達科学)

経済発展とともに都市への一極集中が加速する中で、資源の枯渇や大気汚染・水質汚濁といった従来から問題視されている環境問題に加えて、生態系の破壊も都市化の弊害として位置づけられる。そうしたなかで、都市域における生態系サービス評価や政策過程において参照可能な生態系サービス勘定が求められている。

快適な住環境の実現には生態系サービスが欠かすことはできない。生態系が排除された都市域には、大気浄化機能やアメニティ供給機能が欠落し、都市住民の環境選好を満足させることができないばかりか、公害という最悪の形で生活の質を阻害する可能性がある。都市において高い生活の質を実現するためには、経済発展のなかで生態系サービスの適切な保全が求められる。

近年では、経済学的な貨幣評価手法にはなじまない「幸福度」や「主観的福祉」といった生活の質にかかわる新しい概念が提起され始めている。この概念は従来の生態系保全や生態系サービス評価の経済学的な方法論的枠組みを問い直すものである。ここでは、住民の生活の質にいかに貢献しているかという視点に基づいて、生態系サービスを評価する方法論が求められている。こうしたことを踏まえて、生活の質と都市環境に関して、兵庫県の六甲山周辺の地域を事例とした研究について報告する。

本研究では、環境経済学の分野で開発され、生態系サービス評価手法の一つとして注目されている表明選好法と、心理学的な成果を取り入れて開発されたLife Satisfaction Approachを用いて、都市生態系の一つである緑地を事例に評価研究を行う。特に、前者では回答者の個人的なバックグラウンドが都市生態系サービス評価に与える影響について考察し、後者では生態系サービスが精神的健康などの非効用的要因に与える影響について考察する。そして、こうした評価手法に基づく生態系サービス評価を勘定体系として位置づける方法について議論する。


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