| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T18 -- 3月24日 9:30-11:30 RoomB

都市住民 にとっての生物多様性保全:現状と課題、今後の展望

企画者: 保坂哲朗(首都大・都市環境), 曽我昌史(東大・工)

世界人口の半数以上が都市部に集中する現在、都市の生物多様性の保全は生態学における重要なテーマである。都市域は本来人間の生活や経済活動が円滑に行われることを目的に設計・管理されているため、生物多様性の保全においても都市住民の合意や協力が不可欠である。これまで都市の生物多様性保全は、生態系サービス(都市住民の利益)の考え方に基づいて実施されてきたが、都市の生物多様性は必ずしも正の効果を与えるわけではなく、害虫や害獣の増加など負の効果を与える可能性も指摘され始めた。また、生物多様性に対する住民の価値観や好みは多様であり、多くの住民の合意に基づき意思決定が行われる都市においては、生物多様性保全の考えは必ずしも受け入れられるものではない。加えて、このような人間社会と野生生物の関係は一般に不安定で、センセーショナルなキャンペーン等によって生物多様性への印象はネガティブなものへと一変する可能性がある。

これまで都市の生物多様性に関する生態学的研究は生態学的パターンを考察するものが多く、社会の需要や受容については社会科学系の研究に委ねてきた。しかしながら、都市の生物多様性保全を効果的に推進するには、このテーマに関して生態学者も積極的に関わり、生物多様性保全がもたらす生態学的、社会経済的インパクトを都市住民や社会の視点から明らかにする必要がある。そこで、本企画集会では、都市住民と生物多様性の相互作用の問題に取り組む生態学研究者と環境経済学研究者による研究紹介を通じて、都市における生物多様性保全のあり方について議論を行う予定である。

コメンテーター:沼田真也(首都大)、丑丸敦史(神戸大)

[T18-1] 都市化が哺乳類に与える影響と人間社会との関わり  *斎藤昌幸(農工大・農)

[T18-2] 都市の生物多様性保全と害虫問題  *保坂哲朗,沼田真也(首都大・都市環境)

[T18-3] 都市における子供の自然体験が生物多様性保全意識に及ぼす影響  *曽我昌史(東大・工),Kevin J Gaston(Exeter Univ.),山浦悠一(森林総研),栗栖聖(東大・工),花木啓祐(東大・工)

[T18-4] 都市生活と生態系サービス  *佐藤真行(神戸大・発達科学),青島一平(神戸大・発達科学)


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