| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-186  (Poster presentation)

河畔林における同一巣での繁殖例からみたオオタカとノスリの資源利用

*森田知沙(弘前大学大学院), 香川裕之(東北緑化環境保全株式会社), 東信行(弘前大学)

 オオタカとノスリが選好する営巣環境は,立木密度,営巣木の樹冠被覆率などの点から類似しており,2種の間には種間関係があることが先行研究から知られている.しかし,類似した環境で繁殖する2種の採食生態について比較した研究例はほとんどない.本研究では,同一の巣で,異なる年にオオタカとノスリがそれぞれ繁殖した事例と,同一の巣ではないが距離的に近く類似した営巣環境下で,異なる年に繁殖した事例に着目して,巣内育雛期の採食生態について調査し,環境や餌資源の利用を種間で比較した.
 調査は青森県西部を流れる岩木川で行った.同一巣での繁殖が確認された地点では,オオタカとノスリがそれぞれ2014年,2015年に,また,類似した環境の巣で繁殖が確認された地点ではオオタカが2014年に,ノスリが2015年に繁殖した.
 すべての営巣地点において定点調査を実施し,親の行動圏と採食環境を推定した.また,巣内の撮影調査を行い,雛への給餌内容を明らかにした.解析では,各種の探餌行動に植生が与える効果を検討するため,植生を,河川,河畔林,草地,リンゴ園,人工地,水田・畑の6つに区分して,一般化線形モデルを用いてモデル選択を行った.
 結果として,2種の推定行動圏の大きさは類似していたが,雛への給餌内容と利用環境は異なっていた.給餌内容で,ムクドリやスズメなどの鳥類が85%以上を占めたオオタカは,河畔林などの閉鎖的環境を,ハタネズミなどの哺乳類が75%以上を占めたノスリは草地や果樹園などの開放的環境を主な採食場所としていた.観察中における,同所的に繁殖する猛禽類からの干渉頻度は低く,本研究で得られた種間での採食環境の違いは,両種が利用する本来の餌資源や狩り手法の違いに由来していると考えられた.


日本生態学会