| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-201  (Poster presentation)

イラガの化性の減少を遺伝的要因からさぐる

*古川真莉子(滋賀県立大・環境科学), 高倉耕一(滋賀県立大・環境科学), 中西康介(滋賀県立琵琶湖博物館, 滋賀県立大・環境科学), 沢田裕一(滋賀県立大・環境科学), 西田隆義(滋賀県立大・環境科学)

昆虫の化性は温度や日長により決まり、温暖な地域では化性が増えるのが普通である。実際、近年の温暖化により、化性が増えたことがしばしば報告されている。しかし、温暖化にもかかわらず同じ地域で化性が急激に減少する現象をイラガMonema flavescensで発見した。
イラガの化性は年1化もしくは2化といわれている。2005年の冬に、滋賀県立大学構内に存在する越冬繭にマーキングをして、翌2006年に羽化時期を調べたところ、6月中旬と8月中-下旬に羽化する年2化系統と、8月上-中旬に羽化する年1化系統があることが分かった。さらに、2012年に再度同様な羽化調査を行ったところ、年2化の系統は確認できず、すべてが年1化系統だった。
年1化と年2化系統では、夏の羽化期のピークが、1週間ずれていた。このずれが生殖隔離をもたらすかどうかを推定するため、イラガの生理寿命を調べた。イラガでは、成虫の口吻が退化しており摂食できないので、実験室での生存期間が生理寿命である。2013年と2014年5月に年1化の地域(滋賀県彦根市)と、年2化の地域(岡山県赤磐市、滋賀県彦根市の一部)から越冬繭を採集し、羽化成虫の生理寿命を実験室で測定した。さらに遺伝的に生殖隔離があるかをミトコンドリアDNAのCOI領域、リボソームDNAのITS領域を用いて検証した。イラガの生理寿命、羽化時期と遺伝子の変異をもとに、化性減少の理由を考察する。


日本生態学会