| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-207  (Poster presentation)

高梁川水系の両側回遊性カジカ中卵型は海まで降りていなかった

*菅野一輝(九州大学), 鬼倉徳雄(九州大学), 乾隆帝(山口大学)

カジカ中卵型は、日本海、瀬戸内海、有明海に流入する一部の河川に生息し、同一種内に生活史二型(両側回遊タイプと陸封タイプ)があることが知られている。特に九州では、両側回遊タイプが遺伝的に単一の集団であるのに対し、陸封タイプは水系のみならず支川ごとに独自の集団を形成し、遺伝的に高度に分化している。また、回遊タイプは胸鰭条数のモードが15、陸封タイプは胸鰭条数のモードが13であることで区別される。本研究は、カジカ中卵型で同種内に生活史二型が生じる原因を明らかにすることを目的とし、そのために両タイプのカジカとも生息しているとされる高梁川水系(岡山県・広島県)でカジカの採集を行い、遺伝的集団構造、回遊履歴、形態を調べた。

調査と解析の結果、高梁川水系には、本流の広い流程に分布する胸鰭条数のモードが14の集団と、最上流部にのみ分布する胸鰭条数のモードが13の2つの集団が見られた。ミトコンドリアDNA D-loop領域の386bpの配列を決定した結果、これらの2集団のハプロタイプは最大で3塩基違いと非常に近縁であった。条数13集団が陸封タイプで、条数14集団が両側回遊タイプと予想されたが、条数14集団の耳石の元素分析からは回遊履歴が見られなかった。高梁川水系の本流のカジカは、陸封タイプと両側回遊タイプの中間的なタイプであることが示唆され、カジカの生活史二型創出を考える上で重要な個体群であると考えられた。


日本生態学会