| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-384  (Poster presentation)

分布以北におけるシラカシの肥大成長と気象要因との関係

*船木賢人, 石田清(弘前大学)

照葉樹林の主要樹種である常緑広葉樹シラカシは、分布北限以北に植栽された個体でも大径木に成長することがある。このような分布北限以北の植栽木と自然分布域の個体群との間にはどのような相違があるのだろうか。本研究では、シラカシの成長と気候変動との関係について以下の仮説を立てた。仮説1:夏期(7~9月)の気温の上昇は成長に負の影響を及ぼし、その影響は南にある生息地ほど大きい。仮説2:冬期(11~3月)の気温の上昇は成長に正の影響を及ぼし、その影響は北にある生息地ほど大きい。仮説3:冬期に降水量が増加すると、冬期に乾燥する地域では成長に正の影響が現れる。仮説4:積雪深の増加は、地域に関わらず成長に負の影響を及ぼす。この問題を検討するため、分布北限以北(青森県弘前市)及び自然分布域(福島県いわき市、奈良県橿原市)を対象として調査を行った。各調査地の成木から木部コアサンプルを採取し、年輪幅と気象条件との関係を分析した。夏期の月平均気温・月最低気温と年輪幅との関係について、北限以北では気温上昇による正の影響が認められた。一方、他の2地点では一部の月において負の影響が認められた。この結果は仮説1を支持しているといえる。冬期の月平均気温・月最低気温と年輪幅との関係について、北限以北では気温上昇による正の影響が認められなかった。一方、他の2地点では正負両方向の影響が認められたため、これらの結果は仮説2を支持していないと考えられる。冬期の降水量の影響についてみると、調査地域によらず一部の月で正の影響が認められた。この結果は仮説3と矛盾しないといえるが、調査地を増やした今後の検討が必要である。積雪深と年輪幅との関係については、3地点共に多くの月で負の影響が認められた。正の影響が見られたのは、いわき市や橿原市などの降雪量の少ない地域の12・1月のみであった。この結果も仮説4と矛盾しないものといえる。


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