| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-385  (Poster presentation)

亜高山帯針葉樹林における優占種三種の個体群動態

*岡田実憲(名古屋大学), 西村尚之(群馬大学), 中川弥智子(名古屋大学), 戸丸信弘(名古屋大学)

地上部バイオマス量の変化(ΔAGB)は森林の炭素循環の理解には欠かせない。熱帯や温帯の森林ではΔAGBと気象条件の関係を検証するための大規模な調査が行われており、温暖化や水ストレスに起因したΔAGBの減少が起きているとの報告があるが、亜高山帯常緑針葉樹林での報告例はほとんど存在しない。本研究では、気温や降水量が中部地方の亜高山帯常緑針葉樹林のΔAGBに与える影響を検証し、亜高山帯常緑針葉樹林の今後の推移を検討した。
中部地方に位置する御嶽山と北八ヶ岳にある合計3プロットのデータを用い、1991年以降の年平均気温と夏季降水量の経年変化や、主要構成樹種(オオシラビソ、シラビソ、コメツガ、およびトウヒ)とプロット全体のΔAGBの経年変化に傾向があるかについて回帰分析を用いて検証した。また、主要構成樹種における胸高直径の絶対成長速度(AGR、サイズ別)とΔAGBに対する年平均気温と夏季降水量の影響を、一般化線形混合モデルにより検討した。
1991年以降の気象条件の経年変化や、主要構成樹種とプロット全体のΔAGBの経年変化に傾向は見られなかったが、より長い期間で見ると年平均気温はどちらの調査地においても有意に上昇していた。年平均気温がコメツガの中間サイズとトウヒの大きい個体には負の影響を及ぼしていた一方、モミ属2種の小さい個体のAGRに正の影響を与えていた。同様に、ΔAGBに関しても、コメツガとトウヒには負の効果が認められたが、モミ属2種とプロット全体には年平均気温に正の効果が認められたため、今後も調査地の気温が上昇していくとすると、中部地方の亜高山帯常緑針葉樹林のAGBは増加していく可能性が高いと推測できる。


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