| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-393  (Poster presentation)

気象要因が北方針広混交林の38年間の動態に与える影響

*佐藤郷(北大環境科学院), 飯島勇人(山梨県森林研), 日浦勉(北大苫小牧研究林)

気候変動下で森林の樹木の成長、枯死、加入などの個体群動態がどのように変化するかが注目されている。特に北方性、南方性の種が混交する移行帯の森林では、気象要因に対する応答の種間差から気候変動下で種構成が変化していく可能性がある。亜寒帯常緑針葉樹林と冷温帯落葉広葉樹林の移行帯にあたる北海道の針広混交林では、これまで突発的な気象要因である強風撹乱や非気象要因の個体間競争が動態に及ぼす影響が指摘されてきたが、気象要因の長期変動の影響はほとんど議論されてこなかった。本研究は気象・非気象要因が針広混交林を構成する各樹種の動態に及ぼす影響を明らかにするため、北海道大学中川研究林の原生保存林サイト15か所(計17.5ha、8460個体)の毎木調査データを用い、1979~2016年の38年間の成長量、枯死率、加入率の変化をベイズ推定モデルで解析した。
解析の結果、一部の樹種の成長に成長開始前の非生育期(前年11月~当年4月)の気温と降水量が正の効果を及ぼしていた。一方、生育期(当年5~10月)は気象要因に対する成長応答に種間差があり、針葉樹の成長には気温が負の効果を、また多くの広葉樹では降水量が正の効果を示した。枯死率については、強風撹乱が多くの種の枯死率を高める効果があった。特に針葉樹は撹乱時の枯死率が高く、また大径木が多く倒れる傾向にあったため、撹乱後に林内の針葉樹の優占度は低下した。加入率について、広葉樹は38年間で加入率が増加傾向にある種と減少傾向にある種がみられた。一方非気象要因として、個体間競争が多くの樹種の成長と加入率を抑制していたが、枯死率への影響はほとんど検出されなかった。
北海道は温暖化と多雨化という気候変動が今後進むと考えられており、本解析結果から移行帯針広混交林では将来的に針葉樹の成長が低下し、広葉樹の成長が良好になると予測された。また強風撹乱の発生が針葉樹から広葉樹への樹種転換を加速させる可能性が示された。


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