| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-C-103  (Poster presentation)

2014~2015年春季に日本海で漁獲されたカタクチイワシ成魚の胃内容物

*馬場孝(水産機構日水研), 森本晴之(水産機構日水研), 後藤常夫(水産機構日水研), 南條暢聡(富山水研), 尾田昌紀(鳥取水試)

カタクチイワシ対馬暖流系群の資源状態は、2011年以降低位水準が続いている。本種は多回産卵魚で、その産卵量は産卵期間中の食物量によって変動することが知られている。本種は主にプランクトンを捕食する。同様の食性を示すマイワシの資源量は近年増加傾向にあり、餌競合の結果、本種の食物量および産卵量は低下する可能性がある。本研究では、カタクチイワシの資源変動要因を解明する一環として、本種の餌に着目し、主産卵期である春季に日本海で漁獲された成魚の胃内容物を調査した。
2014年および2015年3~6月に鳥取県沖においてまき網で、2014年4~5月に富山湾において定置網で、2014年5月に新潟県沖においてかけ回しで漁獲された成魚(それぞれ5~68尾合計509尾)を供試魚とした。胃内容物を顕微鏡下で分類し、計数をおこなった。
2014年3~6月の鳥取県沖における本種の胃内容物(以下、個体数%で表示)は、3月下旬、4月下旬、5月下旬には、ポエキロストム目カイアシ類が、それぞれ81%、45%、41%と最も多かったが、4月上旬には端脚類(89%)、5月上旬にはカラヌス目カイアシ類(51%)、6月下旬にはフジツボ類幼生(63%)が最も多かった。2015年4~6月には、どの月もポエキロストム目カイアシ類(50~74%)が最も多かった。富山湾では、4月は端脚類(71%)が、5月はポエキロストム目カイアシ類(93%)が多かった。新潟県沖では、端脚類(93%)が多くを占めた。
本種は産卵期間中に主にカイアシ類、その他端脚類、フジツボ類幼生などを捕食していた。しかし、各海域で空胃の個体も観察された。空胃率の増加は産卵量の低下をもたらす可能性がある。演者らはマイワシの胃内容物も調べており、本種とマイワシとの餌競合の可能性をさらに検証する予定である。


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