| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-156  (Poster presentation)

日本の河川に生息する魚類の分布と攪乱レジームとの関係性

*川西亮太(北海道大院・地球環境), 吉村研人((独)水資源機構), 渡辺裕也(愛媛大院・理工), 三宅洋(愛媛大院・理工), 井上幹生(愛媛大院・理工), 赤坂卓美(帯広畜大)

流量変動(流況)は河川生態系における攪乱レジームを規定する主な要因であり,5つの特性(規模,期間,頻度,タイミング,変化率)によって特徴づけられる.河川に生息する魚類の生活史は流況としばしば関連しており,在来種の分布や外来種の定着の成否に影響する要因の一つと考えられている.しかし,日本の河川における魚類の分布と流況との関連性については未だ知見が限られている.そこで本研究では,国土交通省河川水辺の国勢調査の魚類分布データと日本全国の河川流量観測所の流量データのマッチングにより,主要な在来および外来魚種の分布と流況特性との関係性を明らかにすることを目的とした.データマッチングにより選ばれた全国256地点を対象に,標高,流域面積,在来魚種数,外来魚種数を算出した.また,分布の有無に対する生物地理的影響を加味するため,在来魚類群集データのクラスター分析を基に,地域を分類する変数を作成した.さらに,流量データから算出した171の流況指標を5つの流況特性ごとに数軸へ主成分化し,各特性の流況変数とした.これらを説明変数とし,各魚種の在・不在を目的変数とした一般化線形モデルのモデル選択を行った結果,上位モデルには在来,外来問わず,標高や集水域面積,地域変数が含まれる傾向にあった.また,対象とした在来種では4割近くで外来魚種数の増加による負の影響が見られた.流況変数では,短期的な出水規模や春季の出水規模を反映した主成分が在来魚種と外来魚種とで正反対の効果を持つという興味深い結果が得られた.本結果は,これらの流況特性に配慮した河川管理を行うことが,外来種の定着を防ぎ,在来魚類群集を保全する上で有効である可能性を示唆している.


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