| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S04-7  (Lecture in Symposium)

熱帯泥炭地の回復

*Mitsuru Osaki(北海道大学大学院農学研究院)

 熱帯泥炭地は高密度炭素生態系で、同時に大規模水貯留生態系でもあり、炭素-水相互作用系でもある。安定しているときは保水力により水循環と周囲環境の緩和を実現し、極めて高い植物生産性を示し、炭素の蓄積源ともなる。逆に排水等により熱帯泥炭地生態を攪乱すると、火災や微生物分解により膨大な量の二酸化炭素が放出され、養分循環系も破壊され、さらに乾燥の影響を受け、生物生産性も著しく低下する。以上のことから、熱帯泥炭地は、ABCDEFs の安全補償(Security)と深い関係があることが明らかとなりつつある。[A: Aquatic /water reservoir Ecosystem (水域/水貯留生態系)、B: Biodiversity (低湿地適応の生物多様性)、C: Climate Change (気候変動の緩和策と適応策)、D: Disaster (Fire) (火災災害)、E: Energy (Biomass) (バイオマスエネルギー)、F: Food/Feed (食糧/飼料生産)、s: society (地域社会の活性化)]
 荒廃熱帯泥炭地を、地下水位を高めて湿地-泥炭地とし、植生を修復することにより、回復(Restoration)されると、ABCDEFs の安全補償(Security)が極めて高くなり、COP21パリ協定やSDGs (Sustainable Development Goals)の国家目標の達成が容易となる。この目的のために、高い水位で高い生産能を示すサゴヤシを中心とした栽培(生態管理)体系を構築し、サゴデンプンを食糧/飼料として利用すると共に、膨大なバイマスをバイオマスエネルギーとして利用することにより、高い経済効果が得られ、地域社会を活性化する。同時に、気候変動や地球環境に多大な貢献をする。一方、荒廃熱帯泥炭地を、地下水位を低めて乾燥泥炭地として、オイルパーム等を植えることにより、ABCDEFs の安全補償(Security)が極めて低くなり、COP21パリ協定やSDGs (Sustainable Development Goals)の国家目標の達成が困難となる。


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