| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S07-7  (Lecture in Symposium)

伊豆大島のジオパークとしての魅力と課題

*臼井里佳(伊豆大島ジオパーク推進委員会事務局)

 ジオパークとは、地域社会の過去を知り、将来を見据え、持続可能なまちづくりを目指す長期的な仕組みです。自分たちが暮らす大地(ジオ)の成り立ちや特徴と、それを基盤として育まれてきた生き物や人々の営みの因果・相関関係を明らかにしながら、地域固有の価値を科学的根拠に基づき認識・共有し、それらの保全と活用をバランスよく実現することが求められます。
 伊豆大島ジオパークは、伊豆大島全域を対象エリアとして日本ジオパークに認定されています。伊豆大島は、島そのものが「伊豆大島火山」と呼ばれる国内有数の活火山であり、かつ海に囲まれた島嶼生態系という特徴を併せ持っています。そのため、度重なる自然災害や限られた資源から成る苛酷な島環境を克服し、再生・復興を繰り返して生きることを運命づけられた、島国日本の中でも最も象徴的なジオパークのひとつです。生命を宿す地球、限りある地球を体感的に認識し、人と生物とジオの相互作用を理解するマクロな視点を養い、育む、最高の実地研修の場であるといえます。
 生物地理学的な観点、火山島における生物相形成の歴史、火山活動で破壊された生態系の回復過程を明らかにする研究は、伊豆大島ジオパークの活動にとって不可欠です。これらのさらなる研究成果によって地域独自の価値と魅力を高め、自然科学教育・郷土教育・防災教育や、観光業をはじめとする地場産業等に活かし、地域の安全と活性化につなげていくことが期待されています。もちろん、これらの価値を失うことがないよう、保全活動もジオパークの重要な取り組みです。そして、伊豆大島ジオパークの活動から、伊豆諸島全体の自然環境保全と活用につなげていくことも、今後の重要な課題であると認識しています。


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