| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-073  (Poster presentation)

岩礁潮間帯における植食性動物群集の安定性の空間変異

*藤井玲於奈(北大院・環境), 奥田武弘(水産機構・国際水研), 堀正和(水産機構・瀬戸内), 仲岡雅裕(北大・FSC), 山本智子(鹿大・水産), 野田隆史(北大・地球環境)

【背景】群集内の機能群全体のアバンダンスの時間的安定性(群集アバンダンスの安定性)の空間変異とそのメカニズムの解明は、生態系機能の空間変異の理解の深化に繋がる。種多様性と個体群動態の安定性は一般に高緯度に向かうにつれ低下することから、群集アバンダンスの安定性も高緯度に向かうと低下する可能性がある。本研究では、岩礁潮間帯の植食性軟体動物を対象に、群集アバンダンスの安定性の緯度変異と、そのメカニズムを解明するため、まず群集アバンダンスの安定性と、その構成要素である「個々の種の個体群アバンダンスの安定性」と「個体群動態の種間同調性」について緯度変異を明らかにした。更に、緯度に伴う種多様性の変化が、群集アバンダンスの安定性のメカニズムにもたらす影響を解明するために、緯度に伴う種多様性の変化と、種多様性が「個体群動態の種間同調性」と「個体群サイズの平均-分散の冪乗関係」に及ぼす影響を調べた。最後に「個々の種の個体群サイズの安定性」の緯度変異の原因を検討するために、個体群サイズの平均-分散冪乗関係、平均個体群サイズ、および平均群集アバンダンスの緯度変異を調べた。
【材料と方法】2003年~2010年の期間、鹿児島県から北海道(31.0°N~43.0°N)の太平洋沿岸6地域(大隅、南紀、房総、三陸、北海道南部、北海道東部)の150地点で岩礁潮間帯の植食性軟体動物の定量調査を行い、得られたデータを基に解析を行った。
【結果と考察】群集アバンダンスの安定性は緯度とともに上昇した。これは「個々の種の個体群アバンダンスの安定性の」に対して、平均個体群サイズが緯度と共に上昇したことが大きく寄与した結果と考えられる。以上の結果は、群集アバンダンスの時間的安定性の空間変異を考える上で、多様性を軸としたメカニズムが、必ずしも主要因とは成り得ない場合があることを示している。


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