| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-299  (Poster presentation)

生態系評価に向けた大規模アンサンブル実験を用いた流域圏における溶存有機炭素(DOC)流出量の将来予測−釧路川流域を対象として−

*丸谷靖幸(岐阜大学・流域圏セ), 駒井克昭(北見工業大学), 笠間基(北見工業大学), 信山直紀(北見工業大学), 佐藤辰哉(北見工業大学)

 世界中において,温暖化や降水パターンの変化といった気候変動が問題となっており,豪雨に伴う河川氾濫などの被害が頻繁に生じている.この気候変動の要因として,大気中の二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガスの増加である可能性が指摘されている.そのため,温室効果ガス放出抑制には,流域圏における炭素動態を把握することが重要である.
 一方で,山地から沿岸域へと流れる大量の炭素を含む溶存有機物(DOM)は,河川・沿岸域生態系の重要な微量栄養塩も含んでおり,現在の豊かな流域圏を保全するには流溶存有機炭素(DOC)の循環を理解することは非常に重要である.そこで本研究では,釧路川流域を対象とし,現地観測による結果を基に流域からのDOC流出量を推定する.その後,将来の流域圏保全へ向けた検討として,大規模アンサンブル気候予測データベースd4PDF(database for Policy Decision making for Future climate change)による出力値を基に,将来における流域からのDOC流出量を予測し,現在気候との変化を考察することを目的とする.
 釧路川流域におけるDOC流出量の推定に当たり,本研究では土地利用割合および月流量の変化傾向が同様な小流域である,久著呂川流域において流量およびDOC流出量の推定を行った.流量は,融雪モデル(degree-hour法)と貯留関数法をカップリングした流出モデルにより推定した.DOC流出量は,久著呂川流域の下流端で測定したDOC濃度と流量の関係式を作成することで推定を行った.なお,久著呂川流域のDOC流出量を釧路川流域へ適用するには,久著呂川流域と釧路川流域のDOC濃度を比較し,そこから求められた係数を乗じることで算出した.
 本研究で実施したd4PDFを用いたDOC流出量の将来予測により,将来の釧路沿岸域への溶存有機炭素の流出量が増加する可能性が示唆された.これは,降水量の総量が現在に比べて増加することに伴う流量の増加に起因するものであると推測された.


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