| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-314  (Poster presentation)

タイ王国トラート川流域マングローブ林における溶存無機炭素の日変動:雨季と乾季における観測事例

*近藤美由紀(環境研), 高橋浩(産総研), 吉竹晋平(岐阜大学), 木田森丸(神戸大学), 藤嶽暢英(神戸大学), Poungparn, Sasitron(Chulalongkorn Univ.), Suchewaboripont, Vilanee(Chulalongkorn Univ.), 大塚俊之(岐阜大学)

マングローブ生態系は、熱帯環境での高い純一次生産と、冠水による低い分解呼吸により、極めて高いCO2吸収能を持つと生態系として注目されている。潮汐作用の影響を受けるマングローブ生態系では、分解呼吸によるCO2が水に溶存して流出する経路が想定される。しかし、マングローブ生態系内での溶存無機炭素(DIC)生成やその動態など、DIC流出プロセスに関する情報は限られており、CO2収支の評価には不確実性が残されている。本研究では、カンボジアとの国境からタイの南東端に流れるトラート川のマングローブ分布域でDIC濃度および炭素安定同位体比(∂13C)を指標として、水系を介したDIC流出について解析を行った。
マングローブが分布する本流河口域において、2016年7月(雨季)、2017年の1月(乾季)に1時間毎に河川水を採取し、pH、塩分、DIC濃度および∂13Cの日変動を測定した。また、湾外で海水を、トラート川源流とマングローブ分布域の上流、ならびに干潮前後のマングローブ林内で水を採取し、各測定を実施した。河口域では、各項目の日変動は小さいが、雨季と乾季で明瞭な差があった。雨季は淡水が卓越し、DIC濃度や∂13Cは源流と同程度で、乾季は海水が卓越し、DIC濃度と∂13Cは海水と同程度であった。マングローブ林内では、干潮前後でDIC濃度と∂13Cは変動した。DIC濃度は、干潮時に上流の河川水や海水の値を上回っていた。このとき∂13Cは、海水(-2‰前後)や源流の河川水より(-10‰前後)も低く、雨季には-19.2‰、乾季には-17.6‰であった。対象河川において、上流からの淡水と潮汐作用による海水の2種類の水が混合したと仮定して、塩分から計算されるDIC濃度および∂13Cの理論値は、実測値と干潮時に差が見られた。本発表では、その差を生じさせるDICの起源について解析を行った結果を発表する。


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