| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-026  (Poster presentation)

被度階級データのモデリングによる石狩川源流域風倒跡の植生回復過程の推定

*伊東宏樹, 中西敦史, 津山幾太郎, 関剛, 河原孝行(森林総研北海道)

1954年の台風15号(洞爺丸台風)により、石狩川源流域において原生林の大規模な風倒が発生した。この風倒跡地6か所において1957年より、1〜10年間隔で森林の再生過程が調査されており、2017年に最新の調査がおこなわれた。調査データは、2m×2mの方形区を15〜25個帯状に並べた帯状調査区において、確認された植物種の被度を、方形区ごとに6段階の被度階級で記録するという方式で取得されている。このデータを利用して、状態空間モデルにより、帯状調査区における主要な種の実際の被度の年変化を、調査を行なわなかった年を含めて推定した。この状態空間モデルの観測モデルでは、ある種が各方形区内に存在するかしないかは ある存在確率で決まり、存在する場合には、実際の被度は区間[0,1]の切断正規分布に従うとした。このとき、切断正規分布の位置パラメーターとスケールパラメーターは、観測された被度階級にしたがって決まるとした。また、実際の被度は、空間的には隣の方形区との間で自己相関を持つとした。システムモデルでは、状態の年変化は2階差分のモデルとした。統計的プログラミング言語のStanを使ってMCMC法により、このモデルを調査データに当てはめた。6か所の調査区のうち調査区No.27では、下層植生ではエゾイチゴが1960年ごろに、被度の推定値(事後中央値)が0.6程度にまで優占したのち急速に減少した一方、イワノガリヤスは1970年ごろに被度0.7程度でピークとなった後に減少した、などといったことが推定された。また、クマイザサは1980年ごろまで増加した後、いったん増加率が減少したものの、2000年ごろから再び増加していて被度0.5程度となっていると推定された。高木層ではシラカンバが1970年ごろから増加したものの、1985年ごろからやや減少し、その一方2002年ごろからのトドマツの被度の増加が推定された。


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