| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-124  (Poster presentation)

岡山県蛇ヶ乢湿原周辺における7300年前以降の火事史と植生変遷

*佐々木尚子, 高原光(京都府大・生命環境)

中国山地の蒜山地域には、刈り取りや火入れによって維持される半自然草原が広がっている。また多くの製鉄遺跡が存在し、近世には鉄穴流しによる地形改変が進んだとされる。この地域における火事と植生の歴史を解明するため、岡山県真庭市の蛇ヶ乢湿原(標高680m)で採取した堆積物について、深度204cmまで微粒炭分析を実施した。
この堆積物はすでに花粉分析がおこなわれており、深度197-187cmには鬼界-アカホヤ火山灰(K-Ah;約7300年前)が狭在することが報告されている(高原ほか1997)。
K-Ah降灰前後の深度204-180cmでは、コナラ亜属、ブナ、クマシデ属/アサダ属、ニレ属/ケヤキ属などの落葉広葉樹花粉が多く、微粒炭量は非常に少なかった。深度180-130cmでは、アカガシ亜属花粉が増加する一方、落葉広葉樹花粉は減少した。この時期には、微粒炭量は800-900個/gとやや増加した。深度130-65cmでは、アカガシ亜属花粉が減少し、落葉広葉樹にスギやヒノキ科型などの針葉樹花粉をともなう花粉組成となった。微粒炭量はさらに増加し、960-1820個/gとなった。深度65-35cmでは、アカガシ亜属花粉がさらに減少する一方、マツ属が増加をはじめた。微粒炭量はさらに増加し、深度50cmでは7200個/gの顕著なピークがみとめられた。深度35cm以浅になると、マツ属およびイネ科やヨモギ属の花粉が顕著に増加し、微粒炭量は1600個/gまで減少する。
これらより、蛇ヶ乢湿原周辺では、1000-1500年前頃に火事が増加し、その後、マツ属やコナラ亜属からなる二次林および草原が広がったと考えられる。同じ真庭市に位置する大原湿原の堆積物でも、同時期に相当する層準で微粒炭量が増加することが確認されており、蒜山地域では、この時期に人為の影響が強くなったことが示唆される。


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