| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-07  (Oral presentation)

ミナミコメツキガニにおける地下潜伏時間に対する個体密度の影響
Effect of population density on duration of underground concealment behavior in soldier crab

*木村俊希, 阿部哲也, 森山徹(信州大大学院生体医工)
*Toshiki KIMURA, Tetsuya ABE, Toru MORIYAMA(Shinshu Univ.)

琉球列島固有種のミナミコメツキガニ(Mictyris guinotae)は、干潮時に地上へ出現し、大集団で放浪しながら採餌する。その際、外敵等が現れると、各個体はそれを察知して瞬時に地下へ潜行するため、大集団は消失するが、数分後には、個体が再び出現し、集団は回復する。この個体の再出現は、外敵が去っていなくても生じるため、カニ個体はタイマーのような計時機構を備え、その働きで再出現するとの仮説を立てた。検証実験では、カニ1、5、10、20、40、60、80匹の集団それぞれが、直径30cmのタライ内に作られた人工干潟上に放置された。どのサイズ条件でも、カニは投入後すぐに地下へ潜行した。すべてのカニが潜行した後、10分間再出現の有無を観察した。その結果、10匹以下の条件ではほとんど再出現が観察されなかった。一方、20匹以上では再出現が観察され、集団サイズが増えるにつれ再出現率が増加した。続いて、5、10、20、40、80匹条件での同様の実験が、どの条件でもカニ密度(個体数/cm2)が40匹条件のそれに等しくなるよう表面積が調整された人工干潟上で実施された。その結果、どの条件でも再出現が観察され、出現率に大きな差はなかった。これらの結果から、ミナミコメツキガニは、タイマーのような計時機構ではなく、地下のカニ密度を感知し、その値が一定以上の場合、再出現を発現する神経・生理機構をもつという新たな作業仮説を得た。


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