| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S07-5  (Presentation in Symposium)

樹木の倒れにくさを根系で評価する-根系の三次元データ取得法の検討-
Evaluation of tree stability by root structure - development of methods for obtaining three-dimensional data of root system-

*藤堂千景(兵庫農林総セ, 名古屋大学), 池野英利(兵庫県立大学), 山瀬敬太郎(兵庫農林総セ), 大橋瑞江(兵庫県立大学), 谷川東子(森林総研関西), 平野恭弘(名古屋大学)
*Chikage Todo(Hyogo pref. tec. ctr., Nagoya Univ.), Hidetoshi Ikeno(Univ. Hyogo), Keitaro Yamase(Hyogo pref. tec. ctr.), Mizue Ohashi(Univ. Hyogo), Toko Tanigawa(Kansai Research Center, FFPRI), Yasuhiro Hirano(Nagoya Univ.)

樹木の倒れにくさを評価する上で根系構造データは極めて有用な情報である。しかしながら、その取得の困難さから、根系の一部についてのデータ取得に留まることが多い。本研究では樹木の倒れにくさの指標として一部の根系データから全体の構造を再現することを目標とし、根系内の一部について、その三次元座標とサイズなどの情報を取得し、このデータ群から根系全体の三次元構造を推定した。すなわち、エアースコップにより掘り出されたクロマツ根系について、一定間隔の点及び分岐点、端点における三次元座標、直径およびこれらの点間のつながり情報を手動計測した。手動計測した根の点群情報に基づき根の三次元構造を再構築すると共に、任意断面における根の座標や直径を求めるプログラムを開発した。さらに、手動計測を行ったクロマツ根系について、三次元レーザスキャナを用いて根系構造情報を取得した。手動計測データより再構築した根系構造とレーザスキャナにより得られた構造データと比較したところ、根の三次元座標及び直径はよく一致していることが確認できた。このことから、手動計測データに基づき再構築した根の三次元構造は、レーザスキャナによって得られる三次元計測データに匹敵するものであることが示された。レーザスキャナによって樹木根系を計測するには、多額の費用がかかり、スキャニングのためのスペースが必要となるため、調査地において多くの根に適用することは難しい。本研究の結果から、慎重に手動計測された根系構造データも、根系構造の把握、評価において有用性が極めて高いことが示された。


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