| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W14-2  (Workshop)

全国レベルでの温度勾配に沿った樹種構成の変化
Directional changes in tree species composition along a temperature gradient in Japan

*鈴木智之(東京大学), 石原正恵(京都大学), 日野貴文(自然環境研究センター)
*Satoshi Suzuki(Univ. Tokyo), Masae Ishihara(Kyoto Univ.), Takafumi Hino(Japan Wildlife Research Center)

気候変動は種の分布の変化をもたらし、結果としてバイオームの分布につながると予想される。もし、気候の温暖化に応じて樹木の分布が変化する場合、各種のアバンダンスは分布の低温域側で増加し、高温域側で減少すると予想される。このアバンダンスの変化は、加入率、死亡率、もしくはその両方の変化によって起こる。本研究では、モニタリングサイト1000の毎木調査データを用いて、日本列島の温度勾配に沿った常緑広葉樹、落葉広葉樹、温帯性針葉樹、亜寒帯性針葉樹の割合とその変化も解析した。次に、温度勾配に沿った各樹木種の加入率・死亡率・および個体群増加率(アバンダンスの変化)を解析した。
 全国の樹種タイプの変化には方向性のある変化が見られた。常緑広葉樹と落葉広葉樹の分布境界付近(常緑広葉樹の低温側境界、落葉広葉樹の高温側境界)で、常緑広葉樹の個体数割合は増加し、落葉広葉樹は減少していた。これは特に二次林で顕著であったが、老齢林でも同様の傾向があった。また、落葉広葉樹の個体数は低温側分布境界で増加していた。この樹種タイプの個体数割合の変化は、主に、各構成種の加入率が低温な場所ほど高くなっているためであった。この傾向は2004-2012年のデータ(Global Change Biology誌に公表済み)でも2004-2017年のデータでも同様であった。これらの結果は、樹木およびバイオームの分布が徐々に低温域側にシフトしている(北上している)ことを示唆する。


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