| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム MES01-3  (Presentation in Symposium)

公共データベースでつなぐ生態学と分子生物学
Using public databases as a bridge between ecology and molecular biology

*仲里猛留(DBCLS)
*Takeru NAKAZATO(DB Center for Life Science)

分子生物学は生命現象をDNAという分子の挙動で説明しようとする学問であるといっても過言ではない。研究者たちは、これまでにさまざまな生命現象(≒生態)を担う一連の遺伝子を発見したり、ゲノムを解読してそこに潜んでいるであろうDNAの部分に意味を見出そうとしたりしてきた。こうしたDNA配列は、30年以上にわたり NCBI(米)、EBI(欧)、DDBJ(日)によるINSDC (International Nucleotide Sequence Database Collaboration) の枠組みで収集され、誰でも自由に検索・利用できる「公共データベース」として提供されている。例えば、2020年現在、GenBank中には4億件を超える約3900億塩基分の遺伝子データが登録されている。近年、次世代シーケンサー(NGS)技術が発展してきており、生態学分野でも大きなツールになってきている。INSDCでは、このようなNGSデータの収集も行っており、登録データを自身のデータを組み合わせたり比較しながらの解析も可能である。一方、生態学、生物多様性の分野でも重要なデータベースがある。GBIFはさまざまな生物の標本情報や目撃情報が、EOL (Encyclopedia of Life) やCoL (Catalogue of Life) には各生物のカタログ的情報が記載されていて、食草や生息地などの情報が参照できる。DNAバーコーディングの情報はBOLD (Barcode of Life Data System) で収集されているが、INSDC(GenBank)にも一部が登録されており、これらの双方の活用が必要であろう。今後、これらのデータを組み合わせて活用することで分野の垣根がどんどんと低くなることが予想されるし、そうなることを期待したい。


日本生態学会