| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S13-1  (Presentation in Symposium)

アジアの森林土壌における有機炭素分解への温暖化影響とフィードバック効果
Influence of global warming on soil organic carbon decomposition in Asian monsoon forests and the feedback

*梁乃申(国立環境研究所), 寺本宗正(国立環境研究所), 高木健太郎(北海道大学), 近藤俊明(国際農研), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 平野高司(北海道大学), 高橋善幸(国立環境研究所), 高木正博(宮崎大学), 石田祐宣(弘前大学), 荒巻能史(国立環境研究所), 楢本正明(静岡大学), ZHANGYiping(西双版納熱帯植物園, Ailaoshan Station), LAIDerrick(香港中文大学), CHIANGPo-Neng(台湾大学), 曾継業(国立環境研究所), PIAOShilong(北京大学), SHENGGONGLi(地理科学・資源研究所), 冨松元(国立環境研究所), 趙昕(国立環境研究所), 中根周歩(広島大学), YAOTze-Leong(マレーシア森林研究所)
*Naishen LIANG(NIES), Munemasa TERAMOTO(NIES), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Takashi HIRANO(Hokkaido Univ.), Yoshiyuki TAKAHASHI(NIES), Masahiro TAKAGI(Miyazaki Univ.), Sachinobu ISHIDA(Hirosaki Univ.), Takafumi ARAMAKI(NIES), Masaaki NARAMOTO(Shizuoka Univ.), Yiping ZHANG(XTBG, Ailaoshan Station), Derrick Y.F. LAI(CUHK), Po-Neng CHIANG(Taiwan Univ.), Jiye ZENG(NIES), Shilong PIAO(Peking Univ.), Li SHENGGONG(IGSNRR), Hajime TOMIMATSU(NIES), Xin ZHAO(NIES), Kaneyuki NAKANE(Hiroshima Univ.), Tze-Leong YAO(FRIM)

IPCCの「1.5度目標」やSDGsの目標達成には、森林保全と新規植林による炭素吸収源の強化とともに、土壌への炭素貯留量を増やすことが必要となる。全球の土壌中には、植物由来の有機炭素が約3兆トン蓄積されているが、微生物による分解を経て年間約700億トン(2008年時点)の炭素が大気中に排出されており、その量は、人為的CO2排出量の約10倍に相当する。特に、欧米に比べ、日本を中心としたアジアモンスーン地域は降水量が多く、植物の生育に適した湿潤な環境にあるため、陸域生態系は高い生産性を示し、土壌有機炭素の量が多い傾向が見られる。一方、有機炭素の分解速度は温度の上昇によって顕著に増加する性質があるため、地球温暖化に伴って、今後増進することが考えられる。そこで、本研究では、(1)我々が開発・推進している世界最大規模のチャンバー観測ネットワークを用いて、北海道の最北端(北緯45°)から赤道付近のマレーシアまでの広域トランセクトに沿って、代表的な森林生態系における土壌呼吸の連続測定を実施する。それによって、気候変動や攪乱が、各森林生態系の炭素循環に与える影響を定量的に把握する。(2)一部のサイトにおいて赤外線ヒーターを用いた温暖化操作実験を行い、土壌有機炭素分解の温暖化に対する反応を定量的に評価する。(3) 環境DNA法を用いて、気候帯や温暖化処理の有無が土壌微生物相やその動態に及ぼす影響を把握し、温暖化効果の長期維持メカニズムを解明する。(4) 土壌放射性炭素(14C)の分析から、土壌の画分毎の有機炭素の蓄積歴及び長期的な温暖化環境下での分解メカニズムを解明する。(5)多地点の長期観測データと土壌有機炭素分解に関する詳細な情報を基に、複数の既存土壌呼吸モデルの比較解析を行い、気候変動や攪乱に対する陸域炭素循環の応答、フィードバック効果の将来予測精度向上に役立てる。


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