| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-142  (Poster presentation)

カナダ北西準州におけるPinus banksiana林ならびにPicea mariana林の花粉生産量
Pollen productivity of Pinus banksiana and Picea mariana stands in Wood Buffalo National Park, NWT, Canada

*佐々木尚子(京都府立大学), 倉地奈保子(平岡森林研究所), 田邊智子(京都大学), 高木健太郎(北海道大学), 高原光(京都府立大学), 杉田真哉(タリン大学), 林竜馬(琵琶湖博物館)
*Naoko SASAKI(Kyoto Pref. Univ.), Nahoko KURACHI(Hiraoka Forest Inst.), Tomoko TANABE(Kyoto Univ.), Kentaro TAKAGI(Hokkaido Univ.), Hikaru TAKAHARA(Kyoto Pref. Univ.), Shinya SUGITA(Tallinn Univ.), Ryoma HAYASHI(Lake Biwa Museum)

花粉分析は、堆積物に含まれる花粉化石群集をもとに過去の植生を復元する手法である。しかし、分類群ごとに花粉の生産量や飛散性が異なるため、分析結果の定量的な解釈が難しい。Landscape Reconstruction Algorithm (LRA; Sugita 2007a, b)を用いて、カナダ・Wood Buffalo National Park(WBNP)での植生変化の定量的な復元をおこなうため、LRAの主変数のひとつである各分類群の花粉生産量を、当地域の主要樹種Pinus banksianaならびにPicea marianaについて推定した。
単位面積あたりの年間花粉生産量は、雄花あたりの花粉数にリタートラップ法により得られた年間雄花落下数を乗じて求めた(齋藤 2012)。Pinus banksianaについては、2019年6月にWBNPならびにその隣接地域で、またPicea marianaについては、2020年6月に北海道大学天塩研究林で、開葯前の雄花試料を採取した。これらについて、雄花あたり雄蕊数および雄蕊あたり花粉数を計数し、両者を乗じて雄花あたり花粉数を求めた。年間雄花落下数は、WBNPおよび隣接地域にある長期観察プロットでのリターフォール調査の測定値(Kurachi et al. 2019, unpublished data)から推定した。Pinus banksiana の20—180年生の5林分ならびにPicea marianaの60—170年生の3林分で得られた雄花生産量データを、開花後の雄花の平均乾重を用いて雄花落下数に換算した。
その結果、Pinus banksianaの雄花あたり花粉数は3.3×105粒、5林分を平均した年間雄花落下数は1.74×107個・ha-1・year-1、年間花粉生産量は5.79×1012粒・ha-1・year-1となった。また、Picea marianaの雄花あたり花粉数は2.4×105粒、3林分を平均した年間雄花落下数は0.17×107個・ha-1・year-1、年間花粉生産量は0.40×1012粒・ha-1・year-1となった。Pinusについては、日本国内のアカマツ林およびチョウセンゴヨウ人工林と、またPiceaについても国内のトウヒ林ならびにアカエゾマツ林と同等の花粉生産量である。


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