| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-149  (Poster presentation)

過去165年間の石狩平野の土地利用変化が鳥類群集に与えた影響
Quantifying the impacts of the past 165-year land use change on bird communities in Ishikari Lowland

*北沢宗大(北大院・農), 山浦悠一(森林総合研究所), 先崎理之(北大院・地球環境), 埴岡雅史(北大院・農), 大橋春香(森林総合研究所), 小黒芳生(森林総合研究所), 松井哲哉(森林総合研究所), 中村太士(北大院・農)
*Munehiro KITAZAWA(Agric., Hokkaido Univ.), Yuichi YAMAURA(FFPRI), Masayuki SENZAKI(EES, Hokkaido Univ.), Masashi HANIOKA(Agric., Hokkaido Univ.), Haruka OHASHI(FFPRI), Michio OGURO(FFPRI), Tetsuya MATSUI(FFPRI), Futoshi NAKAMURA(Agric., Hokkaido Univ.)

過去数千年間における生物多様性の主要な変化は、原生植生が農地へ転換された際に生じたと指摘され、その影響の理解は現在の生物多様性や保全状況を評価する上で欠かせない。しかしこの土地利用の変化は、北半球の多くの地域では1400年代までに生じたために、生物の種数や個体数、分布がどの程度変化したのかは殆ど評価されてこなかった。
 北海道の石狩平野では、原生植生の農地への転換が1860年代に生じ、農地への転換前の土地利用図が広域的に作成されている。そこで本研究では、石狩平野における原生植生の農地への転換が鳥類の分布と個体数に与えた影響を、群集・機能群規模で地図化・評価するために、野外調査データと土地利用図から鳥類の個体数を説明可能な統計モデルを構築し、鳥類の個体数と分布変化を推定した。まず2015・2017年に石狩平野で野外調査を実施し、各土地利用2 haあたりの鳥類各種の個体数を推定した。次に、6年代(1850・1880・1900・1950・1985・2016年)の土地利用図を2 haの解像度でデジタル化した。そして、現在の土地利用ごとの個体数密度を過去の土地利用図に外挿し、平野全域の個体数を年代ごとに推定した。
 鳥類群集の平野全域の個体数は過去165年間で70%以上減少したと推定された。個体数の増減傾向は機能群ごとに異なり、裸地性鳥類では過去165年間で50%以上の増加が、草原性鳥類では60%以上の減少が推定された。森林および湿地性鳥類の個体数は90%以上減少したと推定され、個体数減少が最も大きい機能群と考えられた。本研究で推定された群集・機能群規模の個体数の減少幅は、他地域の研究で報告された農業集約化や、過去30年間の気候変動による鳥類の個体数の減少幅を超えていた。本研究結果は、原生植生の農地への転換が生物多様性の主要な変化をもたらしたという指摘を支持した。原生植生の農地への転換は、将来的に農地の拡大が懸念される高緯度地域等では、今後も生物多様性への大きな脅威となるだろう。


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