| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W18-6  (Workshop)

ソーシャルメディア上での「環境問題」への言及と共有の実態
How are "environmental issues" mentioned and shared on social media?

*打田篤彦(京都大学)
*Atsuhiko UCHIDA(Kyoto Univ.)

 近年の環境問題を巡る動向として、2015年の国連総会で採択された2030年に向けた行動指針であるSDGs(持続可能な開発目標;17の目標のうち3つを気候変動対策、陸海の保全が占める)が官民問わず人口に膾炙していることや、EU諸国などでの若年層を中心とした気候変動についてのデモ――などが挙げられる。日本国内では2020年度、海洋汚染対策として7月1日よりレジ袋の有料化が法律化され、10月26日の菅首相の所信表明演説では2050年までの脱炭素社会の実現を目指す旨が宣言された。その一方で、環境問題として言及される政策課題は他にも多岐にわたり、また多くの課題への対処で市民個人による配慮行動が欠かせない。ゆえに、環境問題に関する政策課題への世論の把握は、施策の実現において重要な前提といえる。
 そこで本発表では、環境問題に関する政策課題の認識の現状について、マイクロブログサービスのTwitterを活用した計算社会科学的な調査を、実際のデータを通して提案する。Twitterの調査利用に関しては、世代の偏りなどが指摘される一方で、投稿型のソーシャルメディアで国内最大級の利用者を持つこと、また環境問題に関する直接的な意識調査での社会的望ましさの回答への影響を緩和し得ることなどの有用性が挙げられる。この前提に立って本調査では、『令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』での政策課題を参照し、一般および現職国会議員のTwitterアカウントがそれらへ言及したtweetデータを取得して、文章へのテキストマイニングおよびそのメタデータへのクラスター分析を実施した。その結果、一般および議員のアカウントとも広く言及される課題がある一方で、一般の関心に比して議員からの言及が限定的な課題や、専門知識のある個人の発信に偏りがちな課題といった認識の分布が可視化された。他にも、ソーシャルセンサやユーザーの属性といったtweetデータの特質を利用した調査の方法も併せて提案する。


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