| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-109  (Poster presentation)

雌雄異株植物オニドコロにおける青色光応答で上を向くオス花序の送粉効率
Blue-light response and pollination efficiency of upright male inflorescences in Dioscorea tokoro

*工藤葵(京都大学), 杉原優(京都大学), 太田敦士(京都大学), 堺俊之(京都大学), 寺内良平(京都大学, 岩手生工研)
*Aoi KUDOH(Kyoto Univ.), Yu SUGIHARA(Kyoto Univ.), Atsushi OHTA(Kyoto Univ.), Toshiyuki SAKAI(Kyoto Univ.), Ryohei TERAUCHI(Kyoto Univ., IBRC)

雌雄異株植物や雌雄異花植物では、雄花と雌花で雄蕊や雌蕊の有無や発達度合以外の形質にも差異が見られる場合がある。このような花形質の雌雄差は、花のサイズ、香り、蜜量、花序あたりの花数などで報告されている。雌雄異株植物であるヤマノイモ科オニドコロDioscorea tokoroは花序角度に性的二型があり、雄花序が斜上し、雌花序が下垂する。花序角度の性的二型は複数の雌雄異株植物や雌雄異花植物から報告されているが、その雌雄差を生みだすメカニズムや繫殖成功への寄与は明らかになっていない。
本研究では、オニドコロの斜上する雄花序が光に応答しているかを検証した。オニドコロの野外集団にパネルを設置し、自然光、遮光、青色光、赤色光の4条件下で雄花序の角度を計測した。その結果、自然光と青色光下での花序角度の経時変化には差がないが、遮光と赤色光下では花序が下向き傾向になることが分かった。このことから、雄花序の斜上は青色光に応答した光屈性反応が関与すると考えられた。
続いて、斜上する雄花序が繁殖成功に寄与するのかを検証した。雄花序の角度を人工的に操作し、無処理、上向き処理、下向き処理の3条件で花粉の持ち出し数を比較した。各処理の花序は集団内でかたまらないように配置された。その結果、無処理、上向き処理、下向き処理で花粉の持ち出し数の平均には有意な差はなかった。次に、気象条件によって無処理、上向き処理、下向き処理で花粉の持ち出し数が変化するかを検証した。本発表ではその結果を含めて、青色光に応答して斜上する雄花序の繁殖成功への効果について考察する。


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