| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-111  (Poster presentation)

小笠原諸島に生育する樹木の種子は長期保存が可能か?【E】
Possibility of ex situ conservation of tree seeds growing in the Ogasawara Islands【E】

*木村(加藤)恵(森林総研 林育セ)
*Megumi KIMURA (KATO)(FFPRI FTBC)

種子保存は生息域外保存の中でも限られたスペースに多様な種を保存できる費用対効果の高い方法のひとつであるが、その可否は種子の乾燥耐性に依存すると指摘されている。熱帯や亜熱帯に生育する植物種では乾燥耐性を持たない難貯蔵種子の割合が高いことが報告されているが、個々の種の保存性や発芽特性については未だ情報が限られている。本研究では希少種や固有種が多く含まれる小笠原諸島の樹木を対象に、種子の乾燥耐性と発芽特性を調べた。充分に乾燥させた種子と湿潤状態を保った種子について、TTC溶液を用いた生存胚の染色により種子の活性を調べた。また、種子の数が充分に採取できた樹種については、寒天培地に播種し、インキュベータ内(25℃の恒温条件)で発芽実験を行った。発芽数の確認は週に1度、最終の発芽から4週間後まで行った。種子の活性調査および発芽実験の結果から、調査を行った30種のうちヒメフトモモ、シマシャリンバイ、モクタチバナでは乾燥後に生存率や発芽率が低下したことから、この3種は乾燥耐性を持たない難貯蔵種子と判断され、乾燥冷凍での種子の長期保存は困難であると考えられた。発芽実験を行った樹種の多くは25℃の恒温条件で発芽が見られたが、コハマジンチョウなどいくつかの種では種子が健全にもかかわらず6週間の育成では発芽がみられなかった。これら樹種の発芽にはなんらかの発芽促進処理が必要であると考えられた。


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