| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-112  (Poster presentation)

画像認識は植物の形態変化をどうとらえるか:雑草の生育初期に着目して【E】
How does image recognition capture changes in plant shape? Focusing on early growth stages of weeds【E】

*松橋彩衣子, 大石優, 小荒井晃, 杉浦綾(農研機構)
*Saeko MATSUHASHI, Yu OISHI, Akira KOARAI, Ryo SUGIURA(NARO)

深層学習を用いた画像認識技術は、生物観測における強力なツールとなることが期待される。一方で、生物の形態のどこが特徴としてとらえられているのか、時間的に変化する形態をどのように学習させるべきかを理解することは、技術の導入目的を達成する上で重要な課題となる。
農耕地における雑草管理の分野においても画像認識は技術開発が進められている。雑草は、種により適切な管理方法が異なり、成長段階の早いほど防除が容易とされていることから、種と成長段階を同時に判別することが課題の一つとなっている。雑草含め多くの植物では、生育初期には短期間で著しい形態変化が認められるが、こうした生育初期の形態を精度よく判別するためにはどのように学習させれば良いのだろうか。本研究では、子葉と本葉で形の異なる警戒雑草4種を対象とし、生育初期における形態変化の学習方法を検討した。各種の成長段階を「子葉のみ」「子葉と本葉」「本葉のみ」の3つのクラスにわけて画像を収集し、各クラスの組み合わせを4条件にわけて学習・検証した。内2種については、屋内外で子葉から本葉にかけて生育し、収集とは異なるデバイスにより継時的に撮影を行い、検証に用いた。画像認識アルゴリズムにはYOLO及びVGGを用いた。判別器が画像のどの部分を特徴としてとらえているのかをGrad-CAMにより可視化したところ、人間が判別時に着目する葉の輪郭以外にも、様々な特徴を判別に用いていることが示された。ほとんどの学習条件において成長段階を1クラスにまとめたモデルが最も精度が高くなった。成長段階を複数のクラスにわけると、種内のみならず種間の誤判定も増加した。種の判別を目的とするならば、生育段階により葉の形状が異なっていても、1種1クラスで学習することが効果的であり、生育段階の把握を目的とするならば、目的に応じ最低限のクラスわけを行うことが望ましいことが示唆された。


日本生態学会