2022年12月に開催された生物多様性条約COP15で採択された新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえた、我が国の次の生物多様性国家戦略（次期戦略）を2023年３月末に閣議決定すべく、検討を進めている。次期戦略は、2030年のネイチャーポジティブを目指し、生物多様性・自然資本（＝地球の持続可能性の土台・人間の安全保障の根幹）を守り活用するための戦略として位置づけており、生物多様性損失と気候危機の「２つの危機」への統合的対応や社会の根本的変革の必要性を強調しているとともに、30by30目標の達成等の取組による健全な生態系の確保や、自然資本を守り活かす社会経済活動（自然や生態系への配慮や評価が組み込まれ、ネイチャーポジティブ（自然再興）の駆動力となる取組）の推進を謳っている。また、現行の「生物多様性国家戦略2012-2020」から、戦略の構造や点検評価の仕組みを大幅に見直している。具体的には、2030年のネイチャーポジティブを目指して、５つの基本戦略を設定し、その下での2030年に向けた目標を、あるべき姿の「状態目標」と、なすべきことの「行動目標」に分け設定すること、さらに、第二部の行動計画（関係省庁の関連施策を整理するもの）において、行動目標ごとに関係省庁の関連施策を整理する形としたことから、関係省庁の施策がどの行動目標に紐づき、それらの行動目標の達成の成果が、状態目標の達成の評価につながり、それらを合わせて、2030年のネイチャーポジティブに向けてどこまでの成果を得られたのかを評価する、一気通貫の構造とした。また、点検評価の頻度や項目も見直しており、こうした改善により、生物多様性に関連する様々な取組が、国家戦略の達成にどう貢献したかをより明確にできるものとした。さらには、次期戦略を踏まえ、地域ごとにいかに魅力的かつ野心的な地域目標を立てられるかが次期戦略実施のカギとなっており、それらについて解説する。