| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S01-3  (Presentation in Symposium)

洪水のもたらす恵みと災いを考慮した流域管理
River basin management considering the benefits and damages of floods

*瀧健太郎(滋賀県立大学)
*Kentaro TAKI(University of Shiga Prefecture)

2021年4月に特定都市河川浸水被害対策法をはじめとする流域治水関連9法を成立し,流域治水が本格的に展開されるようになった.流域治水は「集水域・河川区域のみならず,氾濫域も含めて一つの流域として捉え,その流域の関係者全員が協働して,①氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策,②被害対象を減少させるための対策,③被害の軽減,早期復旧・復興のための対策,を総合的かつ多層的に取り組む.」ものとされている.特定都市法の適用範囲は,都市河川に限らず築堤河川合流部や狭窄部の上流域にも拡張され,遊水機能がある土地を「貯留機能保全区域」に指定し機能を保全できる.付帯決議では,「流域治水の取組においては,自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの考えを推進し,災害リスクの低減に寄与する生態系の機能を積極的に保全又は再生することにより,生態系ネットワークの形成に貢献すること」としている.

こういった中,現場では流域治水とグリーンインフラの関係が模索されているが,理解しやすい事例に霞堤がある.定義に諸説あるが本稿では不連続部のある多重の堤防システムを「霞堤」とし,多重の堤防で挟まれた土地を「霞堤遊水地」と呼ぶ.霞堤の治水機能は概ね,貯留機能(機能①),氾濫流・内水排除機能(機能②)に分類される.通常,急こう配の扇状地河川では機能②が卓越し,緩勾配の平地河川では機能①が卓越する.殆どの場合,霞堤遊水地には堤内から小河川・水路が流れ込み不連続部で本川に接続する.霞堤遊水地は歴史的に農地利用されてきたが,堤外~遊水地~堤内が流水で連続しており,水生生物の移動経路が確保される.平常時も流水性の魚類が遊水地に遡上する.外水位が高くなると遊水地に緩やかに洪水が流れ込むため,本川の激流を避けた魚類の一時的な避難場所となる.遊水地には独特の氾濫原生態系が形成され,生態系ネットワークの要のひとつとなっている.


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