| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S04-4  (Presentation in Symposium)

企業と生態学者の知識ギャップをどう埋めるか?【B】
How to fill knowledge gaps between companies and ecologists?【B】

*宮本育昌(JINENN)
*Ikuaki MIYAMOTO(JINENN)

近年、気候危機のみならず自然の毀損によっても金融システミックリスクが発生し、経済が崩壊する懸念があると言われている。これを防ぐためには金融がどの企業に投資するかを見定める必要があり、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)の提言に基づく情報開示に続き、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Task Force on Nature-Related Financial Disclosures)による開示枠組の開発に注目が集まっている。欧州ではいち早く自然関連の情報開示を義務化する動きが進んでおり、金融機関や企業の対応は既に拡大している。さらには、これらを含むサステナビティ情報の開示枠組の標準化についても議論がなされている。このような中、単一指標「CO2e」を世界共通で用いることができる気候と異なり、自然は場所に依存した多くの指標を使う必要があるために「データギャップが大きい」という課題が認識されている。自然が毀損することにより、自然に依存している企業活動が立ち行かなくなるか否かを見定めるためには、どのようなデータが必要となるだろうか。情報開示をしなければならない企業の立場で期待されるデータのあり方に対して、生態学者はどのような対応ができるのであろうか。自然が大きく毀損すれば、影響を受けるのは企業活動だけではなく、生態学のフィールド研究も同様であるのは自明である。企業が事業活動による自然の毀損を食い止め、自然を再生し、ネイチャーポジティブを目指す上で活用できるデータのあり方と生態学者の関与について、議論の参考となりうる情報を提供したい。


日本生態学会