| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W09-3  (Workshop)

小笠原におけるグリーンアノール防除技術開発の現状
Current status and problems for development of green anole control techniques in Ogasawara

*戸田光彦(自然環境研究センター)
*Mitsuhiko TODA(Japan Wildlife Research Center)

 グリーンアノールの防除において必要となる技術的事項は、探索、捕獲、遮断、再侵入防止などの項目に区分される。小笠原での防除において、探索と捕獲には主に設置型の粘着トラップが用いられており、遮断にはフッ素系樹脂を使った柵が用いられているが、これらを駆使してもアノールの地域的根絶を達成できるのは狭い範囲(1~2ha)に限定され、また分布拡大を完全に抑制することはできていないのが現状である。
 現在、防除において第一に求められているのは広域における生息密度低減化・地域的根絶のための技術であり、粘着トラップを1個ずつ手作業で設置するやり方を補い代替する方法として、何かを散布するのがよいと考えられる。生分解性の粘着トラップをドローン等から投下する散布型トラップと、生きた昆虫に化学物質を装着して散布するベイト剤の開発が進められているが、それぞれに課題があり、各課題について体系的に検討して解決を図る必要がある。第二に、トラップに掛からないほど低密度の条件下でアノールを検出するための技術も求められている。探索犬と環境DNA分析はそれらの候補たり得るが、小笠原の無人島における適用については解決すべき課題がいくつかある。
 現在、行政機関等によるアノール防除業務の一環として技術開発が検討されているが、新たな防除手法をするためにはさまざまな専門性を持つ研究者、事業者の関与が必要である。これまでの検討においても爬虫類の生態・行動や害虫防除、昆虫学、材料加工、薬学、航空機、人工知能、伴侶動物などの専門家、小笠原現地の生物や植生、地形などに詳しい者がアノール防除技術開発に加わっているが、更なる専門家、関係者の参画が強く求められている。この自由集会を契機として、アノールの生態系被害と対策に関心を持ち、今後の防除技術開発について一緒に検討できる研究者が誕生することを期待したい。


日本生態学会