| 要旨トップ | ESJ70 自由集会 一覧 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W12  3月20日 13:00-14:30 Room A

生物群集データをどう料理するか? 実証研究と理論がフィードバックする時代へ
Analyzing community data: feedback between empirical and theoretical studies

東樹宏和(京都大学), 林息吹(京都大学)
Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.), Ibuki HAYASHI(Kyoto Univ.)

群集生態学が転機を迎えつつある。生物群集を対象とした研究は、これまで、理論研究が実証研究を圧倒的にリードする形で進んできた。しかし、マクロ生態学的なメタデータが蓄積するとともに、DNA分析を用いた生物多様性解析が幅広く利用されるようになった現在、この状況が大きく変わりつつある。
本集会では、「大規模な群集データを分析するために理論の枠組みを再構築する」必要が生じつつある現状を俯瞰し、実証研究主導で生態学の土台が今後どう変化していくのか、議論する。生物群集の構造をDNA分析ベースで高速かつ高精細に解明できるようになった現在、生態学者が感じている以上に、生態学的な分析の対象が拡大してきている。ヒト腸内細菌叢分析や環境DNA調査の急速な拡がりによって、医学・農学・工学・環境学にわたる諸分野で生物群集データが日常的に扱われるようになり、一人の生態学者が把握しきれない範囲で分析手法や理論が高度化しつつある。
こうした時代だからこそ、生物群集動態の共通原理を解明するために本当に必要なことを冷徹に選別し、実データを基にして検証可能な理論的枠組みを再構築していくことが求められる。ミクロな生物(細菌・アーキア・真菌等)とマクロな生物(動物や植物)の両方を対象とした研究での実例を紹介しながら、新時代を生き抜くための戦略について議論していきたい。
本企画では、まず、生物間相互作用ネットワークやメタ群集構造、生物群集・個体群の時系列動態に関する大規模データを分析するためのアプローチについて、多様な生物群での実例をもとに解説する(東樹)。その上で、生物群集分析において中核的な話題となる多重安定性の概念を説明しつつ、生物群集の代替安定状態を包括的に理解していくための戦略について議論する(林)。最後に、参加者を巻き込みながら、下剋上の様相を呈しつつある群集生態学の行き着く先について熱い議論を展開したい。

[W12-1]
生物間相互作用・メタ群集・時系列動態を読み解く *東樹宏和(京都大学)
Species interactions, metacommunities, and temporal dynamics *Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.)

[W12-2]
群集形成過程が作り出す代替安定状態を実証する *林息吹(京都大学)
Demonstrating the presence of alternative stable states of ecological communities *Ibuki HAYASHI(Kyoto Univ.)


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