シンポジウム



  1. Plant-soil interactions to maintain biodiversity and functions of tropical forest ecosystems
  2. 保全科学が挑む情報のギャップ
  3. 豊かな国づくりに向けた生物多様性の活用政策
  4. 環境DNA による生態学研究の新たな展開


S1

Plant-soil interactions to maintain biodiversity and functions of tropical forest ecosystems

熱帯林の生物多様性と機能を維持する植物・土壌の相互作用

企画者/Organizer

Kazumichi Fujii (Forestry and Forest Products Research Institute)
藤井一至(森林総合研究所)

Ecologists have revealed the uniqueness of tropical forests in terms of biodiversity and nutrient cycling. A unique feature of tropical forests is their high biodiversity and productivity on strongly-weathered soils, which contrast with temperate forests that support much lower diversity on more fertile soils. However, different tropical regions (Southeast Asia, South America, Africa, etc.) possess distinct geohistories and plant composition. Patterns and processes of plants, soils, and their interactions are diverse among tropical forests. New data and knowledge are recasting the existing image of tropical forest-soil systems and raise a new question: to what extent do plants, soils, or their interactions determine the variation in biodiversity and functions among tropical forest ecosystems? To answer this question and identify knowledge gaps, the different viewpoints of plant ecology and soil ecology, and those from different research sites are needed. We invite tropical soil scientists and plant ecologists from tropical America, Africa, and Southeast Asia to discuss the needs and possibilities of a cross-continental approach.

これまでの熱帯生態学研究によって、熱帯林の持つ高い生物多様性や養分循環に関する特異性が解明されてきた。その一つは、肥沃度の低い熱帯土壌における高い多様性、生産性であり、それは温帯林と対照的である。一方で、熱帯林は生物種構成や地史の異なる大陸間(東南アジア、南米、アフリカ)に広く分布しており、生物・土壌種及びそれらの相互作用には地域間に大きな違いが存在する。本シンポジウムでは、熱帯林の生物多様性および生態系機能の地理的変異に対して植物、土壌、その相互作用はどのような役割を果たしているのか?というテーマを土壌、植物生態生理の両面から解き明かすことによって、熱帯林の多様性と機能に地域間変異を生み出す機構への理解を深めることを目指している。土壌、植物生態学者、そして異なる地域を研究対象とする研究者が集まることで、熱帯林の共通則や地理的変異を考察するとともに、大陸間比較など今後の研究展開について議論したい。シンポジウムは英語で行う。

講演/Talks

Introduction: How to solve mysteries in plant-soil interactions in tropical forests
趣旨説明:熱帯林の植物-土壌相互作用のなぞを解くために
Kazumichi Fujii (Forestry and Forest Products Research Institute)

Soil phosphorus and the ecology of lowland tropical forests
熱帯低地林の土壌リンと生態学
Benjamin L. Turner (Smithsonian Tropical Research Institute)

Nitrogen and phosphorus dynamics in contrasting soil types under Cameroon tropical forests: challenges from a viewpoint of Africa
カメルーン熱帯林の異なる土壌タイプにおける窒素・リン動態の比較:アフリカの視点からの挑戦
Makoto Shibata (Kyoto University)

Latitudinal and altitudinal gradients of silicon accumulation by forest trees: the potential importance of plants in silicon cycling in lowland tropical forests
森林樹種のケイ素集積における緯度及び高度傾向:低地熱帯林におけるケイ素循環研究の開拓の重要性
Kaoru Kitajima (Kyoto University)

Mechanisms of reproduction of dipterocarp trees in tropical rain forest in Southeast Asia
東南アジア熱帯雨林におけるフタバガキ科樹木の開花・結実機構の解明
Tomoaki Ichie (Kochi University)

Diversification of tropical rain-forest ecosystems in association with the biogeochemical asymmetry of phosphorus and nitrogen
リンと窒素の生物地球化学的非対称性が生み出す熱帯林生態系の多様性
Kanehiro Kitayama (Kyoto University)


S2

保全科学が挑む情報のギャップ


企画者/Organizers

天野達也(ケンブリッジ大学)・大澤剛士(農業環境技術研究所)・赤坂宗光(東京農工大学)

科学が生物多様性保全に直接貢献するためには、データを集積し、そこから科学的知見を得て、その知見を活用するという情報利用の過程を経る。しかし、これまで集積されてきたデータの量や種類は、科学研究の需要とは必ずしも一致しない。また科学が蓄積してきた知見と、保全の現場が必要とする情報が一致しないことも知られている。こうした情報利用の過程に存在するいくつもの「ギャップ」は、生物多様性保全に対して科学が貢献する際の障壁となっている。IPBESやJBO2などで科学の果たす役割が問われる今、まさに我々はこの情報のギャップに挑んでいく必要があるだろう。本シンポジウムでは、まず保全科学が直面している情報のギャップとその原因について説明する。次にこの問題を克服するために、情報が少ない種や地域を対象としたデータの集積、情報の欠如を補うモデリング、研究-実務間ギャップの克服、という3種類の取組みについて講演を行う。

講演/Talks

保全科学における情報のギャップと3つのアプローチ
天野達也(ケンブリッジ大学)

情報が欠如した種の分布をどうモデリングするか
石濱史子(国立環境研究所)

生態学的データの空間的・分類群間偏りを解消するための取組み
大澤剛士(農業環境技術研究所)

研究-実務間ギャップ1:政策が必要とする科学的情報・知見とは
大澤隆文(環境省)

研究-実務間ギャップ2:保全従事者が必要とする科学的情報・知見とは
高川晋一(日本自然保護協会)


S3

豊かな国づくりに向けた生物多様性の活用政策


企画者/Organizers

岡野隆宏(環境省),西田貴明(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング)

近年、日本の生物多様性政策は、従来の「自然環境の保護」に加え、「生態系の活用」の視点が加わり、生物多様性の主流化に向けた施策が展開されつつある。新たな国土計画、社会資本重点整備計画等、平成27 年に改訂策定された政府計画において「生態系を活用した豊かな国づくり」の考え方が盛り込まれている。例えば、生態系の機能を発揮させる社会基盤整備である“グリーンインフラ”や、生態系を活用した防災減災である”Eco-DRR”など、生態系の保全をツールと捉えた生物多様性政策の概念形成、計画策定が進められてきた。そこで、本シンポジウムでは、政府計画における生物多様性の位置づけを整理し、経済社会における生物多様性の主流化に向けた政策動向を紹介しつつ、「豊かな国土づくりに向けた生態系の活用」をテーマに研究開発、普及啓発、資金動員の観点から、今後の施策展開に向けて必要となる研究・取組等について議論を進めたい。


S4

環境DNA による生態学研究の新たな展開


企画者/Organizers

土居秀幸(兵庫県立大・院・シミュレーション)・山中裕樹(龍谷大・理工)

環境DNAとは,水中や土壌など生態系内に存在するDNA断片のことである。かつては微生物の調査・研究などに用いられてきたが,近年,湖沼や河川,海洋などの水中に存在する環境DNAを利用して魚類などの大型生物の分布や生物量などを推定する新たな手法が開発されつつある。環境DNA手法は水をすくって分析するだけで調査できることから,既存の採捕などの手法と比べて低コストで多くの調査地を調査できることや,生息場所を破壊せずに調査できるなど多くのメリットがある。本シンポジウムでは,ここ数年で日本の研究グループが開発してきた,環境DNAに関連する様々な技術について紹介する。具体的には,定量PCR法を用いた環境DNAによる生物分布,SNP解析,デジタルPCRを使った解析,そして,ユニバーサルプライマーによる環境DNAメタバーコーディングなどの手法と野外での適用例を紹介する。そして,今後の環境DNAがどのように,生態学のツールとしての活用できるかについて議論したい。

講演/Talks

趣旨説明:環境DNA による生物分布推定
土居秀幸(兵庫県立大・院・シミュレーション)

種特異的プライマーセットとリアルタイムPCRによる魚類の分布推定(仮)
山中裕樹(龍谷大・理工)

SNP の定量的解析による遺伝子型頻度の推定(仮)
内井喜美子(大阪大谷大・薬)

デジタルPCR を用いた生物分布・生物量推定(仮)
土居秀幸(兵庫県立大・院・シミュレーション)

ユニバーサルプライマーMiFishをつかった魚類の環境DNAメタバーコーディング (仮)
宮 正樹(千葉県立中央博物館)

魚類環境DNAシークエンスデータに対応する種判別・多様性解析パイプラインの開発と展望(仮)
佐藤行人(東北大・東北メディカルメガバンク機構)

野外水域でのメタバーコーディング:MiFishをつかった舞鶴湾での環境DNA解析 (仮)
山本哲史(神戸大・院・人間環境)

総合討論

コメンテーター:近藤倫生(龍谷大学・理工学部)

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