| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-11

外来カワリヌマエビ属の侵入・分布拡大プロセスと在来種との関係

*西野麻知子(琵琶湖環境科学研究センター),丹羽信彰(六甲アイランド高),池田実,遠山裕子(東北大・農),大高明史(弘前大・教育)

ミナミヌマエビNeocaridina denticulata denticulataは、西日本の淡水域に広く分布する淡水エビであるが、2000年前後から日本各地で同属のカワリヌマエビNeocaridina属のエビが頻繁に採集されるようになった。調べたところ、ミナミヌマエビとは異なった形態や、本来の分布域でない東日本や北海道からも分布が確認された。本種の近縁種・亜種は、中国、韓国に広く分布しているが、これらの地域からカワリヌマエビ属が釣り餌や観賞用の活エビとして20年以上前から輸入されている。そのため、外来の近縁種・亜種が日本の淡水域に侵入し、分布を広げていると考えられる。しかし中国では、同属の近縁種・亜種が20種以上記載されており、どの種・亜種が日本に侵入しているかや、在来のミナミヌマエビとの交雑の有無についてはわかっていない。そのため、輸入記録のある中国の河南省、ミナミヌマエビの分布記録のある福建省等で採集を行い、日本各地で採集したカワリヌマエビ属と形態比較を行うとともに、mtDNAの比較を行った。外来と考えられる最も古い標本は1980年代に兵庫県で採集されており、形態的には、複数の種・亜種が日本に侵入・定着していると考えられる。mtDNAの解析からは、日本国内の複数の地域で、在来亜種との交雑の可能性が高い地域もみつかった。日本国内における分布拡大プロセスについては今後の課題であるが、釣り餌のための蓄養の他に、インターネット販売、各地のホームセンターでの観賞用エビ販売が全国への分布拡散に寄与したと考えられる。


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