| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T25-1

捕食・被食系と対抗的表現型可塑性

舞木昭彦(九大・理)

誘導防御、誘導攻撃は変動する捕食−被食相互作用における適応戦略である。それら形質自体の誘導性ゆえに、可塑性が可塑性をよび、あたかも共進化しているような形質のダイナミクスが短時間のうちに見られる。このような対抗的な表現型可塑性は行動だけでなく形態形質にも見られる一般的な現象であり、捕食‐被食相互作用を通じ共進化してきたと解釈できる。ではこの対抗的な表現型可塑性が進化し維持されている条件はどのようなものだろうか。

本研究では、対抗的な表現型可塑性が捕食−被食系において共進化し安定に維持される条件を数理モデルにより分析した。2種の可塑性の能力が進化し維持されるためには、誘導防御能力と誘導攻撃能力があたかも軍拡競争をしているような関係性でなければならず、誘導防御が効果的であるほどこの傾向は強い。またこれらの結果は、種内捕食−被食系である共食い系においても成り立つ。

最近、形態による対抗的な可塑性が、いくつかの種内、種間捕食‐被食系で報告されているが、それらの相互作用はここで示した条件を満たしていると思われる。


日本生態学会